2009-01-01から1年間の記事一覧

2009年のまとめ

年末最後の二日は、景気づけの意味もあって、猛然と料理をする。 ・ 2009年をふり返って。 新しいことをやりたいとつねに思いつつ、力が足りずに目前のことで手いっぱいだった。 やったことは博士論文の提出。それと介護。そのくらい。 ・ いつの間にか六つ…

夢七夜

肩の荷が少しおりたのもつかの間、日替わり(時間替わり)でショックを受けたり、盛り上がったり、不安になったり、怒り狂ったり、緊張したりし続けたので、その間、悪夢を見続けていた。 ・ 拷問されて千切れた指の先が無数にぶら下がる、狭い小部屋にいる…

論文提出と素敵なマツオさん

疾風怒濤の一週間を過ごし、気がつけば年末だ。 博士論文を提出したのもそのひとコマだが、もうずいぶん前のことな気がする。 最近になり気づいたのだが、博論は書いただけではだめで、出すにはいろいろと書類が要り、それを揃えるのが(私には)ものすごく…

果たし状とサンキューメール

授業運営のことで、腹に据えかねる、というと月並みだが、マグマのように透き通った赤に燃え上がる怒りがあり、ついに学長宛てに果たし状を書き送ってしまった。 初め学長に送ろうと思い、しばらく考えてそれはやり過ぎではないものの先方も困ると思い、教務…

シルヴィ・ギエム&アクラム・カーン・カンパニー『聖なる怪物たち』

18日、林懐民がギエムに振りつけ、カタック舞踊の踊り手アクラム・カーンとコラボする話題の作品の日本初上演を観る。 チェロやパーカッションの楽器演奏やヴォーカル、哲学的だったりコミカルだったりするセリフの入る、いかにもヨーロッパのインテリが好み…

火の用心

訳あって、生まれて初めて町内の夜警活動に参加した。 総勢4名。 先導するおじさんの拍子木に続き、「ひのーーようじんーー」と声をあげ、町のすみずみまで練り歩く。 住んでいるのは江戸時代から続く、総戸数300世帯ほどの小さな町。 それがこういう輪郭…

裁縫解禁

一日だけ裁縫を解禁して、ミシンを出した。 一度出すと10時間ぐらいやってしまう。 前から懸案だった黒ワンピースの襟を作りかえる作業。 エステートセールで1,5ドルで買ったわりにはウールジョーゼット風の上等なものだが、キッスのエース・フューレイの…

フレデリック・ワイズマン『パリ・オペラ座のすべて』

最初に観たワイズマン作品、『チチカット・フォーリーズ』(1967)はマサチューセッツ州の精神障害者用刑務所を撮ったドキュメンタリーで、無造作に指に煙草をはさんだまま患者を「診察」する医者の姿が強烈な印象として残っている。 刑務所や学校、福祉施設…

清野とおる『東京都北区赤羽』

アカバネーズとしては当然押さえておかねばならない作品。 その第二巻に赤羽自動車学校が登場する。 ・ 蘇るのはそこへ通ったひどく暗い日々、どぶに捨てた30万円…。 なぜ30万円もかかったかというと、いろいろ前へ進まず半年も通ったからである。 最後…

里芋のグラタン

グラタン・ドーフィノワを里芋で作ってみた。 あまりの美味しさに自分は天才ではないかという気が急にしてくる。 グラタンって滅多に作らないのだが、冬になるとこういう熱々でほくほくしたものが食べたくなる。 前から里芋で作ってみたかった。 ベーコンと…

川上未映子『ヘヴン』

重苦しく、考えさせられる小説だった。 そしてこのところ必要から何冊か読んだ現代日本の小説では、いちばん文章がいい。 ・ 苛めというのは深く現代的なテーマながら、自分としては弱い分野だ。 というのは、自分が育つ過程で見聞きした覚えがなく、経験と…

徒労と安堵

川上未映子の『ヘヴン』を重い気持ちでのろのろと歩き読みしていたら遅くなり、ル・クレジオの講演がすでに満席になっていて入れなかった。 徒労感のまま風が冷たい中をだいぶ駅のほうまで歩いて、ふと45rpmのマフラーをしていないのに気づき、同じ道を目を…

ダジャ単シル・ヴ・プレ

韓国語の先生に勧められてつい、上記のようなタイトルの本を買ってしまった。 副題は「フランス語だじゃれ単語集」。 あまりに下らないが、初級者が単語を覚えるにはいいかも(少なくとも私向きなので、初級者じゃなくて残念)。 たとえば次のような感じであ…

斎藤環『関係する女 所有する男』

地図を読むのが好きで好きでたまらない女子としては、こういう男女二元論ものは通常信用しないのだが、それでも手にとってみようと思ったのは、桐野夏生が推薦していたから、そして表題にわりとピンとくるところがあったから。 しかし全体としてすっきり納得…

授業参観

今日、教える側としては生まれて初めて授業参観された。 この大学では今、教員と職員があらゆる授業を見学していい月間となっているのだ。 父母会はある、授業参観はあるで、けっこう驚かされることが多い大学だ。 ・ 背広を着込んだ年配の厳しそうな人が教…

祝福と反省

お局院生友達、またの名シックスティーズ・シスターズの論文が出版社に認められ、立派な賞をとった。 自分のことだけにかまけてはいられないような年齢で研究のスタート地点に立つなど、世間からは理解も応援もされないこと。 その中で何年も公私にわたり互…

名がはこぶ精髄、NHK杯他

三人同時に本を出した方々の姓名を見ていて、三人が三人ともまるで本の著者のような名をもっており、だから長じて本当に本の著者になったのだなと思った。 名が人を作る。 ・ そう思っていたら、女子大生の切られた首が見つかったとのニュース。 縁のある町―…

Catharsis/Thierry Alet

マルチニックのお土産にもらったアーティストのカタログ。 ラム蒸留所のクレマンで展覧があったそうだ。 ・ グアドループ人の父とレユニオン人の母をもつティエリ・アレはニューヨーク在住の画家。 マリーズ・コンデは彼をシェイクスピアのカリバンになぞら…

レヴィ=ストロース死去

人類学者、思想家のクロード・レヴィ=ストロースが10月31日未明に亡くなっていたのが3日、メディアに発表された。 1908年ブリュッセル生まれで100歳11か月。 大腿骨を折って衰弱する2年前までコレージュ・ド・フランスのオフィスに通っていた。 ・ 何歳でも…

メモワール・アンヴォロンテール

こんな介護用品があるといいという話題で、わたしたちが赤ん坊の頃、名前は忘れたけれど全身を洗えてかつそのまま流さずに済む便利な沐浴剤があったと母がいった。 その瞬間、ベネツィアの敷石を踏み外したのでもかがんで靴紐を結んだのでも紅茶をかきまぜた…

凡庸なマクシム・デュ・カンとチューボー並みのフロベール2

この日本語訳の本には章ごとに細かな旅程が地図で示されていて、第八章にはカンペールからラ岬までの思い出深い地名が見える。 特にオーディエルヌAudierneについて書かれたところはぜったい読みたい。 それで第八章を読もうとすると、それは扉だけで終わり…

凡庸なマクシム・デュ・カンとチューボー並みのフロベール1

二年ほど前に邦訳が出ていたことをこれまで知らないでいたギュスターヴ・フローベール『ブルターニュ紀行――野を越え、浜を越え』を読む。 1847年5月から3カ月、フロベールとマクシム・デュ・カンは、リュックを背負ってトゥーレーヌ、そしてブルターニュ周遊…

本気で心配な浅田真央

フィギュアスケート・ロシア大会で浅田真央が絶不調の5位。 ・ 演技前に見せていた眉間の皺、こめかみなど顔のツボを押さえる仕草に不穏なものを感じていたが、やはり今日のフリーの演技も力を出せないまま終わった。 どうも完全に追い詰められているようだ…

岩々山脈

訳読をあてた学生がまったく思いがけず「ロッキー山脈では…」と始めるので、ブルターニュの話なのにどっからロッキー山脈!?と思わず噴き出すと、何人もの学生が「だって辞書にそう書いてある」と口々にいう。 Rocheuses...ほんとだ、「ロッキー山脈」。 ・…

ジミーちゃんとティンガティンガ

NHKハイビジョンでジミー大西がタンザニアでティンガティンガ・アートを学ぶという番組を見る。 久しぶりにジミーちゃんの絵を見たけれど、相変わらず楽しい。 お笑い芸人の中でももう致命的にアホといってよかったジミーが絵の才能をあらわしたのは、20年近…

加藤和彦さん死去

加藤和彦さんが軽井沢のホテルで自殺、62歳。 解散してしばらく経ってからだが、高校時代、元祖のサディスティック・ミカ・バンドが大好きだった。 たぶんYMOの流れで聴いていたのだろう。 特にアルバム『黒船』を好んでいた。 ・ その頃はあまりつなげて…

Unity is submarine

光に透かすととても美しいことに気づき、うっとり見惚れる。 ・ 家族が焼肉屋でもらってきた韓国のおつまみ海苔だが。 ・ 齧ってできた断片は刹那的な感じで、なおさら美しい。

『オマージュ 津田新吾』

吉増剛造氏による題字が付された小冊子を読み、打ちのめされる。 死がきわだつのは、生の鮮やかさの反映。 ただ泣くのでなく死者を想えるのは、関わりあった生者の感受性。

不自然な自然

動物を飼うということは、非常に不自然な自然なのです。不自然の極みにおいて、自然をもらっているのです。 ―― 高橋睦郎 マンションのベランダで植物をやるのもそうだと思う。 鉢植えを置いた家の中でカナブンやトンボが孵るのも。 でも不自然な自然だってい…

ニューボー・ロマンのために

「ニューボー・サイケン」なる表現を聞いた時、新しい債券か何かと思った。 「ニューボー」「ニューボー」と何度も聞いているうち、そうか、医学界では音読みするのかと突然気づく。 マンモグラフィというのはたとえ深刻な状況だったり苦痛をともなってもつ…