2009-11-01から1ヶ月間の記事一覧

川上未映子『ヘヴン』

重苦しく、考えさせられる小説だった。 そしてこのところ必要から何冊か読んだ現代日本の小説では、いちばん文章がいい。 ・ 苛めというのは深く現代的なテーマながら、自分としては弱い分野だ。 というのは、自分が育つ過程で見聞きした覚えがなく、経験と…

徒労と安堵

川上未映子の『ヘヴン』を重い気持ちでのろのろと歩き読みしていたら遅くなり、ル・クレジオの講演がすでに満席になっていて入れなかった。 徒労感のまま風が冷たい中をだいぶ駅のほうまで歩いて、ふと45rpmのマフラーをしていないのに気づき、同じ道を目を…

ダジャ単シル・ヴ・プレ

韓国語の先生に勧められてつい、上記のようなタイトルの本を買ってしまった。 副題は「フランス語だじゃれ単語集」。 あまりに下らないが、初級者が単語を覚えるにはいいかも(少なくとも私向きなので、初級者じゃなくて残念)。 たとえば次のような感じであ…

斎藤環『関係する女 所有する男』

地図を読むのが好きで好きでたまらない女子としては、こういう男女二元論ものは通常信用しないのだが、それでも手にとってみようと思ったのは、桐野夏生が推薦していたから、そして表題にわりとピンとくるところがあったから。 しかし全体としてすっきり納得…

授業参観

今日、教える側としては生まれて初めて授業参観された。 この大学では今、教員と職員があらゆる授業を見学していい月間となっているのだ。 父母会はある、授業参観はあるで、けっこう驚かされることが多い大学だ。 ・ 背広を着込んだ年配の厳しそうな人が教…

祝福と反省

お局院生友達、またの名シックスティーズ・シスターズの論文が出版社に認められ、立派な賞をとった。 自分のことだけにかまけてはいられないような年齢で研究のスタート地点に立つなど、世間からは理解も応援もされないこと。 その中で何年も公私にわたり互…

名がはこぶ精髄、NHK杯他

三人同時に本を出した方々の姓名を見ていて、三人が三人ともまるで本の著者のような名をもっており、だから長じて本当に本の著者になったのだなと思った。 名が人を作る。 ・ そう思っていたら、女子大生の切られた首が見つかったとのニュース。 縁のある町―…

Catharsis/Thierry Alet

マルチニックのお土産にもらったアーティストのカタログ。 ラム蒸留所のクレマンで展覧があったそうだ。 ・ グアドループ人の父とレユニオン人の母をもつティエリ・アレはニューヨーク在住の画家。 マリーズ・コンデは彼をシェイクスピアのカリバンになぞら…

レヴィ=ストロース死去

人類学者、思想家のクロード・レヴィ=ストロースが10月31日未明に亡くなっていたのが3日、メディアに発表された。 1908年ブリュッセル生まれで100歳11か月。 大腿骨を折って衰弱する2年前までコレージュ・ド・フランスのオフィスに通っていた。 ・ 何歳でも…

メモワール・アンヴォロンテール

こんな介護用品があるといいという話題で、わたしたちが赤ん坊の頃、名前は忘れたけれど全身を洗えてかつそのまま流さずに済む便利な沐浴剤があったと母がいった。 その瞬間、ベネツィアの敷石を踏み外したのでもかがんで靴紐を結んだのでも紅茶をかきまぜた…