文学

執筆の苦労

この5日ほどで短編執筆。 病のときはわりと雑念少ないから、創作のしどきだなー。 おおむねできたけど、書きたいことと「お題」を結びつけるのは本当にむずかしい。 すごく悩んで苦労している。 力およばないかも。 ナラティヴは本当にむずかしい、構成も本…

スイカズラの匂い

鼻の奥にスイカズラの匂いを思い出そうとして思い出せずにいる。 少しだけ登場する藤の匂いの独特な甘さならなんとなく思い出すんだけれど。 スイカズラの匂いも思い出せない人間がフォークナーを語っていいんだろうか。 誰も怒らないだろうしバレないだろう…

『ペレ――ハワイの神話』(Saravah東京)

昨日は『ペレ――ハワイの神話』(テキスト:管啓次郎、音楽:Ayuo)を見に、聴きにゆく。 ハワイの自然と神話をテーマにした詩の朗読が、弦楽四重奏、アイリッシュハープなどの一見かけ離れた楽器で奏でられる独特の音楽と結びあった、不思議なパフォーマンス…

最後の新規プロジェクト

大風呂敷というより大布団を広げるという表現がふさわしい世界文学講義に向け、目から焔を出しながら準備中。 やっぱりこういうのはガチでやらないとね。 今年の新規プロジェクトとしてはこれがいちおう最後で、これを乗り切れば今年は乗り切れるはずと思う…

ダニー・ラフェリエール@日仏学院

昨日はダニー・ラフェリエールの講演会へ。 邦訳『帰還の謎』と『ハイチ震災日記』の同時刊行を記念しての来日(それともその逆だったか)。 書いたものとしては『震災日記』の原書、Tout bouge autour de moiを読んだことがあるのみですが、話はユーモアた…

毎年10月1週目の木曜日、日本時間午後8時は……

今年もドキドキ週間が終わる。 まあそんなことはまずないだろうと理性では思いつつ、こんなにフォーマルな待機のさせられ方だと「何かが起こってひょっとしたら」みたいな気にもなってしまうではないか。 たぶん同じような立場の人が全国に20人ぐらいいるの…

ジュノ・ディアス『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』

ずっと読みたくて時間がなくて、ようやく読めて、一気に読んで感動。 パトリック・シャモワゾーの『テキサコ』に影響を受けて、その挙句にこんなカリブ海文学も出てくるんだ、ありうるんだと思うとうれしい。 ・ 主人公オスカーは合衆国のドミニカ移民で大デ…

句会at関口芭蕉庵

もう4,5日前の話ですが、句会に初参加。 こんなに楽しい遊びだったとは。 時間がなくて、前日一時間ぐらいでお題10個を集中的にいっぺんにこなして、 その興奮も楽しかったけれど、当日人の作ったのと自分のを混ぜてあれこれやんやとコメントするのも盛り上…

くる日もくる日も

集中講義のため、目を回しながら猛然と準備。 こういうプログラム作りは好きなんだなーということが最近わかってきたけれど、準備しながら次々広がる、広がる。 オーランドーから台所太平記まで。 ジュール・ヴェルヌから田山花袋まで。 中上健次からマリー…

中上健次

7月が終わってしまう、この期におよんで週休ゼロがまだ続くなか、一番やるべき仕事に着手できないまま…… やっと前期の終りが見えたと思ったら、もう新規の文学講義をスタンバらないと間に合わなくなる時期。 シラバスに山ほど小説の名を載せたのを思い出し、…

ろうそくの炎がささやく言葉(表参道・タウンデザインカフェ)

昨夜は、朗読会「ろうそくの炎がささやく言葉」へ。 東日本大震災後の緊急企画ということで、この8月、同タイトルのアンソロジーが勁草書房から刊行されるに先がけてのイヴェントである。 ・ 小さいカフェにろうそくの炎だけがゆらめく薄暗い空間で、次々声…

『すばる』6月号

遅ればせながら、6月号の『すばる』を読む。 パトリック・シャモワゾーによるエドゥアール・グリッサン追悼文翻訳・ていねいな解題つきと、新連載・今福龍太「ジェロニモたちの方舟」がたがいに呼応しているようで、カリブ海に興味のある人は必読。 ジャズ・…

「詩人たちの春」(続き):日仏学院

何度か足を運んでいる「詩人たちの春」のシンポジウム。 昨日は仕事の帰り、だいぶ遅れて到着したら、運よく和合亮一の朗読「詩の礫」をはじめから聞くことができた。 ツイッターで(進行方向と反対向きの断片で)読んでいた福島をめぐるこの長編詩、塊とし…

「ポリフォニー:関口涼子/朝吹真理子/渋谷慶一郎(東京日仏学院)

詩人、小説家、作曲家による朗読と音楽のパフォーマンス。 フェルナンド・ペソアの婚約者への手紙を素材にした関口涼子の詩のテキスト、Adagio ma non troppoを、ふたりの作家が声を違えて朗読する。 一方がフランス語で、一方が日本語で、ひとりの声は淀み…

リスボン地震

ヴォルテールの「カンディードまたは最善説」5章、6章あたりには、1755年11月、ポルトガルのリスボンで起きた大地震と津波にかんする記述がある。 今回の地震によく準えられているようで、人と話していて確認したくなったのだが。 記述としては面白い。荒波…

現代詩手帖4月号 追悼特集エドゥアール・グリッサン――〈全-世界〉の方へ

エドゥアール・グリッサンが亡くなって2ヵ月近く経った。 死去後に出された中身の濃い追悼記事の数々に目をとおしていて、これらをまとめて訳したら日本であまり知られていない作家の像と思想が理解されやすいのではないか、これから作家を知るいい機会とな…

きことわ

仕事――それじたい小説を読むことだが――の息抜きに読んでいると、なんとも心地いい。 まして今夜は雪だし。 ・ 時間の伸びひろがり、現在に混入してくる過去というような時間のことが、やはり私は好きだし、いつも感じ考えてしまうのだ。 それってちっぽけな…

アニエス×グリッサン

アニエスbがグリッサンへのオマージュとして、2003年のベネツィア・ビエンナーレの折り、撮影したビデオを再公開しています。 http://europe.agnesb.com/en/bside/section/about-agnes/from-the-beginning/edouard-glissant-disappeared-today-february-3rd-…

訃報:エドゥアール・グリッサン

本日午前5時45分(日本時間午後2時45分)、パリ15区の病院で死去。 享年82歳。 ・ 知人からの速報で知りましたが、まだフランスの大メディアには出ていないようです。 ツイッターにはいくつかフランス語とスペイン語で書きこみがありました。 (ので、私も日…

速読の日々

時間刻みでさまざまなテキストを読んでいる。 義務もあれば欲求もあって、それはもうさまざまに。 さきほど近所の本屋で山田風太郎の本をもとめるついでに、つい元指導教授の姪御さんの小説も、そこまで世間にいいと言われると読んでみたくなり、買ってきた…

ツイッター

しかしトヨザキ社長の「芥川賞妄想選考会」はすごい。 10人の選考委員それぞれの声音を使い分けて、ほんとに声が聞こえてくるよう、というか、全員の声は知らないから、活字の字面が見えてくるようだ。 プルーストのパスティーシュも顔負け。 やっぱりこの人…

文学と文芸

それはそうと、文学と文芸とはどう違うのだろう? 文芸という言葉をあちこちで見るけれど、あまり意味がわかっていない。 自分としては文学という言葉しか使わない。 文学とは何かといえば、読むこと書くこと生きること、あるいは世界の記述の仕方かな? そ…

プロジェクトの頓挫、『群島=世界論』ほか

しばらく温めていた聞き書きのスペシャルプロジェクトのため、朝一番に始動するも、あえなく不可能だということがわかる。 二年前、あんなに張りがあった声、こんなにも力がない。 歳をとるというのは過酷なことだ。 いろいろ聞くことを考えていたのに、かえ…

中島らもの教え

苦しい、幸せ、苦しい、幸せ、苦しい、幸せ……が、お盆前までの夏の胸の内。お盆を過ぎると例年は楽(ラク)、サミシイ、楽、サミシイに変わるのだが、昨日、今日のこの猛暑には苦しい、サミシイ、苦しい、サミシイという気持ちだ。 冷房に当たり過ぎたせいで…

与那国島から

与那国島に送金して、池間苗著『与那国語辞典』を送ってもらう。 うれしいことに、与那国に伝わる口承の民話を書きまとめた『与那国島異聞』をオマケとしてつけてくれた。 読んでみると、これがかなり面白い。 ・ その『与那国語辞典』だが、あいうえお順に…

須賀敦子からヤマザキマリへ

ヨーロッパの石の文化というものに対して、個人的に思い入れなど全然ないのだが、それは歴史の年号がどうとか、様式がどうとか、伝統がどうとかいう話の文脈に組み込まれている時のことで、そこに長く身を置いた人、なおかつすごい感受性をもった人の目とい…

阿部和重、種なしから雌蕊へ

待ち望んだ梅雨の晴れ間のように自分だけの時間がひょこっと訪れた時、何をするか? 私は仕事上の下心なく純粋に読みたい本を寝転んで読みたい(時には手芸がしたいことも)。 ということで、阿部和重の『ピストルズ』660ページをようやっと読んだ。 数年前…

『すばる』のハイチ文学記事

1月に起きたハイチ地震にからめて、恒川邦夫先生が12ページほどの記事を書かれている。 地震後にフランケチエンヌと恒川先生が交わしたメール、ダニー・ラフェリエールのコメントなど、ハイチ文学界の現在だけでなく、ジャン・プリス=マルス(と私は思って…

川上未映子『ヘヴン』

重苦しく、考えさせられる小説だった。 そしてこのところ必要から何冊か読んだ現代日本の小説では、いちばん文章がいい。 ・ 苛めというのは深く現代的なテーマながら、自分としては弱い分野だ。 というのは、自分が育つ過程で見聞きした覚えがなく、経験と…

メモワール・アンヴォロンテール

こんな介護用品があるといいという話題で、わたしたちが赤ん坊の頃、名前は忘れたけれど全身を洗えてかつそのまま流さずに済む便利な沐浴剤があったと母がいった。 その瞬間、ベネツィアの敷石を踏み外したのでもかがんで靴紐を結んだのでも紅茶をかきまぜた…