2004-01-01から1年間の記事一覧

スーザン・ソンタグ

東京は初雪の大雪。雪片の落下を見ていると落ち着く。 スーザン・ソンタグの訃報。その言動には理解できないところもあったが、アメリカにいた時、伝記The making of an iconを読んで感銘を受けたことがある。四歳でものごとを批評的に分析するようになり、…

回顧2004

わたしの回顧2004 日本語の小説:松浦寿輝『半島』文芸春秋 日本語以外の小説:Daniel Maximin, Isolé soleil, Seuil, 1981 日本語の人文書:ジャック・デリダ『たった一つの、私のものではない言葉』守中高明訳、岩波書店(初版は2001年) 映画:ガス・ヴァン…

コラージュ

家族の集まりで思いきり家父長的にふるまい、疲れ果てる。ひたすら低きに流れていくだらしない家族を何とか維持するのに、他に思いつく方法がない。帰って、久しぶりに寝込むほど激しい胃痛。医者の言うとおり、売薬の胃痛止めを二回飲むが、まったく効果は…

多和田葉子『飛魂』講談社、1998、『変身のためのオピウム』講談社、2001

こんなに面白かっただろうか。最初に読んだ頃は気が逸れていたに違いない。どちらも、身体の密な接触をもちながら連帯する女たちの話。 今年ははからずも多和田葉子イヤーだった。大事にしてきたことをねじけた気持ちのまま腐らせないように、心身ともに限界…

明日死ぬことがわかっている夢を見た。妹らしき人を相手に残務処理や引継ぎのようなことをやっているが、自分は痛くも悲しくもない。それなのに途中で目覚めたら激しい動悸で、恐ろしさに眠れなくなった。ヨガの太陽礼拝をやり、不調によく効くオタネニンジ…

笙野頼子『金毘羅』集英社、2004

人間の身体と共存する野生の金毘羅、というイメージのすごさには圧倒されるが、この迫力、ぎりぎりのところから繰り出される虚構の力を、自分の性別を少しでも利用して生きのびているわたしが手放しで絶賛するような失礼な真似はしたくない。これを読んだ者…

柚子茶

講師控え室が一緒の中国語の先生に、庭でなったという無農薬の柚子を二個もらったので、皮を刻んで蜂蜜とお砂糖を加え、煮詰めて自家製柚子茶を作る。 久しぶりにヨガのレッスンをみっちりやったにもかかわらず、何だか頭痛と寒気がする。それにしても、鋤の…

ノラーの子供

また胃が痛くなったので景気づけに(?)お茶大に行く途中、前の家を通りかかったら、ノラーの三匹の子猫たちがすっかりむくむく太って、楽しく遊んでいるのに出くわした(模様ですぐわかる)。子猫といっても、もう八歳ぐらいにはなっているだろう。首には鈴…

桐ヶ丘

また一人で桐ヶ丘の団地を歩いてしまった。去年から数度目だから、もう道にもあまり迷わない。もっとも数十年前は目をつぶっていても歩けたのだけど、記憶が古すぎる上、縮尺が変わってしまった感じ。夏は鬱蒼としていた中央公園が落ち葉のプールと化し、相…

読書

明け方に嵐が来たらしい。その後、12月とは思えない陽気となる。昨日まで、そろそろ植木を室内に移動させようかと考えていたのに。暖かくて気持ちがいいので、ベランダに落ちた葉っぱを片づけ、泥に汚れた窓ガラスを洗う。 読書のしすぎで目がつぶれそうだ。…

Jacques Roumain, Gouverneurs de la rosée(1944), Le temps des cerises, 2004

ハイチ現代文学の祖にしてハイチ共産党の創始者、ジャック・ルーマンの『水を制する人々』を読む。旱魃と飢饉に苦しむハイチの集落フォン・ルージュ。かつての殺傷事件をきっかけに、集落は敵味方に分かれ、互いに憎みあっている。ある日、何年も出奔してい…

痛み2

胃の検査を受けるが、異常なしとの診断。その瞬間にもひどく胃が痛み、昨夜もその数日前も胃痛で寝込んでいたというのに、それはストレスによる神経性のものとのことだ。体重だっていきなり6キロも減ったのに、治療法はなし。何でも食べていいといわれたが、…

ヴィトルド・ゴンブローヴィッチ『トランス=アトランティック』国書刊行会、西成彦訳、2004年

街角に立っていると、息子を求める気持ちが無性につのった。小生は父に死なれて長い。母も遠い。子供はいない。しかも知人も肉親もいないとなれば、余所さまの息子に目をつける以外にない。他人の息子であっても、息子は息子。はっきりいってヤケクソからき…

痛み

「動物のいたみ研究会」によれば、犬や猫の手術をするにあたり、26%の獣医師が「動物も痛みを感じる」と認識しつつも、鎮痛薬を使用しないことがわかったそうだ。理由は「必要ない」もしくは「副作用が心配」だからという。以前、可愛がっていた地域猫の…

吉田修一

吉田修一『ランドマーク』講談社 大宮駅西口といえば、わたしがもっとも長いあいだ拠点にしてきたエリアだから、試しに読んでみた。驚くべき退屈さ。文章の薄さ・滑らかさにも内容にも、惹きつけられる部分がない。この作家が今の日本を代表する純文学作家だ…

母乳について

母乳についての聞き取り調査メモ:お酒を飲んだ後の母乳は、一回分絞って捨てればアルコール分は残らない。母親がブロッコリーを食べ過ぎた後の母乳は当然白だが、赤ちゃんの便は緑色だ(!)。乳房が硬くしこって乳の出が悪いとき、タオルなどで温めると出…

天皇家

園遊会での天皇発言をめぐって友人にメールを書いたら、返事が来た。彼らは現人神の名のもとに行われた太平洋戦争を忘れておらず、その悲劇を言葉として、記憶として受け継いできているのだろう、逆説的だけれど歴史を継承できるのは今や皇室の人々だけなの…

侯孝賢

BSでやっていた侯孝賢監督の『ナイルの娘』を観る。大胆さと悲しさが入り混じった不良女子高生の日々を描く朱天文らしい脚本。同じ年(87年)に撮られた『恋恋風塵』とはムードが違っていて、むしろ『憂鬱な楽園』の世界を思い出す。ただし女の子の目を通し…

ヨガ

からだが硬いのは遺伝的なものと諦めていたが、最近前屈で手のひらが床につくようになり、自分でびっくりしている。ヨガを続けていると、意識がどんどん自分のからだの内側に向いてくる。その分、他人への関心は低下する気もする。それは楽なことではある。…

抱き枕

抱き枕を手に入れる。いやな製品。だが背中の痛みには代えられない。先日のヨガで首も痛めてしまったし。たしかに横向きに抱え脚ではさんで眠ると、体圧が分散され、朝起きたときに痛みがない。そういえば日本では寝たきりの患者は床ずれがひどいが、フラン…

カリブ海講座

連休明けの今日、ようやく近所の医院に行き、ウィルス性の腸炎と診断される。生きた乳酸菌を処方してもらった。 お茶大の石塚先生にお目にかかり、マルティニーク、グアドループの文化や生活についてレクチャーしていただく。マングローヴ林が漁民にとっての…

ラフカディオ・ハーン

金曜からウィルス性の風邪をひき、久しぶりに内臓がのたうつような嘔吐を経験する。病院も開いてないので、時々襲ってくる鉛みたいな腹痛と吐き気をじっと耐えるだけ。外は台風。 ちょうど読んでいたラフカディオ・ハーン『カリブの女』(「チータ」「ユーマ…

デリダ

デリダが死んだ。癌の末期でいつ死ぬかといわれていた人だが、特にこの夏以来親しく感じていたので悲しい。デリダ主義者は周りに腐るほどいるけど、タームで切り分けた彼らの解説、論評を見聞きしても何も伝わってこない。テキストを読むしかない。声もから…

阿部榮四郎

島根県八束郡八雲村の山間にある阿部榮四郎記念館に行く。山とコスモス畑のなかの小さな建物だが、温かみのある雁皮紙のコレクションが面白かった。特に紙でつくった衣類。前庭には阿部が紙の原料にした雁皮、三椏(みつまた)、楮(こうぞ)の木が植えられ…

頭痛

台風。最近低気圧が来ると頭痛がひどくなる。外国語、特にフランス語をしゃべり続けると頭痛がしてくる。そのダブルパンチで頭が割れそうだ。

字幕

ラフカディオ・ハーンの作品を翻案した演劇作品『戦慄を食らう人』公演で、生まれて初めて字幕の作業をする。といっても平川祐弘先生が翻訳したものを若干加工し、フランス語の台詞にあわせて送り込んでゆく現場の仕事。書かれた台本をつき合わせている時間…

マリーズ・コンデ3

雨のなか早朝から、ラフカディオ・ハーン没後百年シンポジウムの一環であるマリーズ・コンデの講演を聴きに行く。話はすでになじみのあるカリブ海文化の形成についてで、特に目新しいことはなし。 新作のことを質問したら、コマーシャリズムを意識した作品だ…

マリーズ・コンデ2

Maryse Condé, Histoire de la femme cannibale, Mercure de France, 2003 タイトル『人喰い女の物語』はグアドループの画家Michel Rovélasの作品からの引用だというが、どんな絵なのだろう。 夫殺しの犯人をめぐる探偵小説仕立ての物語のなかで、最大のテー…

マリーズ・コンデ

Maryse Condé, Histoire de la femme cannibale, Mercure de France, 2003 舞台は南アフリカ・ケープタウン。20年来同棲しているスティーヴンとともにここで暮らすロズリーは無名の画家でグアドループ島の出身。 ある夜中、家を出たスティーヴンが街中で何者…

ヨガ

ヨガマットを買う。これで座位のポーズも自宅で快適にできると思ったが、アメリカ製の安物のせいか合成樹脂のにおいがきつく、肌が触れた部分がアトピーっぽくなってしまう。そのうち慣れるだろうか。 ここ一週間ほど毎日続けていたせいか、初めは人間ワザじ…