シルヴィ・ギエム&アクラム・カーン・カンパニー『聖なる怪物たち』

18日、林懐民がギエムに振りつけ、カタック舞踊の踊り手アクラム・カーンとコラボする話題の作品の日本初上演を観る。
チェロやパーカッションの楽器演奏やヴォーカル、哲学的だったりコミカルだったりするセリフの入る、いかにもヨーロッパのインテリが好みそうな構成を「どうなのだろう…」と思いつつ見守っていたが。

やはりギエムはどうあってもすごい。
ラッセル・マリファントと組んだ時にもそう思ったが、衒いなく、自分の変化を恐れないところがすごい。

このダンサーの特別な体は、どんな動きをするのであれ、人の目を惹きつけてしまう。
ダンサーがしゃべるセリフの内容はどうでもいいけれど(それでも、ピナ・バウシュなき後、ギエムがダンス界のコメディエンヌを受け継ぐのかな、とも思った。前々から「おふざけ」が好きな人であるのは気づいていた)、ひとしきり踊った後にハァハァしながら何かをしゃべり、くつろいだポーズのまま脚がどこかしら動いている、そんな動きにも目を奪われた。
アクラム・カーンの腰のあたりにギエムが両脚でつかまって、両者がシャム双生児のようになって緩やかに踊る場面。
激しさがあるわけでなく、何気ないようだけれど、あの時のギエムの筋力というのは普通の人間のことを考えてみれば尋常でない。

この場面もその例だと思うが、人の体(特に二人以上の人の体)が描く造形や動きの軌跡の新しさを見る時、コレオグラファーの才能を感じる。
林懐民の振付は独創的で魅力的だった。

残念なのは、無理に時間を作って行ったためチケット購入が直前になり、東京文化会館3階(B席)から遥か遠い舞台を見下ろすことになったこと。
寝不足で目が疲れているところへ加えて、オペラグラスで必死で目を使ったので、自然な心持ちで舞台を観ることができなかった。
やはり本来、舞台と近い小さな劇場で観たいものだし、このような会場ならいい席を買わなくてはかえってもったいないと思う。