火の用心

訳あって、生まれて初めて町内の夜警活動に参加した。
総勢4名。
先導するおじさんの拍子木に続き、「ひのーーようじんーー」と声をあげ、町のすみずみまで練り歩く。
住んでいるのは江戸時代から続く、総戸数300世帯ほどの小さな町。
それがこういう輪郭を描いているとは十年いるのに知らなかった。
ひと昔前までは紙工場がひしめく地域だったのは知っていたが、それより前、神田川が今よりずっときれいな頃の地場産業は染物だったということは一緒に歩いたおじさんにより初めて聞いた。
今も一軒残る染物屋さんが村田英雄や美智子妃の着物を染めていたのだそうだ。

地元のおじさんたちと裸電球のぶら下がるお神輿蔵でお茶を飲むのは楽しかったが、活動に出てこない人たちなどは「やる気がねぇんだよ、あの人は」とボロカスにいわれることもわかった。
「五人組」とは人を孤立させない一方で、結局そういうものでもある。

温かく迎えてもらったが、本来女子供は別の日に練り歩く。
そういうものなのである。