映画

企画:フランス語圏カリブ映画祭

『ボルベール』を再び見る。やっぱりあの歌の場面いい。 コリーヌ・セローの『サン・ジャックへの道』を見る。 フランス側からピレネーを越え、聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラに向かう道の風景を見たかったから。 もっとドキュメンタリー映画っぽい作…

アリキタリでなくミリキタニ

ユーロスペースで『ミリキタニの猫』(米・リンダ・ハッテンドーフ)。 なんか、いいものを見た。 ジミー・ツトム・ミリキタニ、ソーホーにあるカフェの軒先に身を置き、日々絵を描く81歳(撮影当時、今は87歳)。 サクラメント生まれ、広島育ち、カリフォル…

ジャ・ジャンクー『長江哀歌』(中国、2006)

みんながいいという、噂のジャ・ジャンクーを観に行く。 なるほど長江のたゆたう青い水のロングショットは地形的な映像だけで歴史のスパンを感じさせ、アンゲロプロスを連想させる。 それに煙るような灰色の背景、崩落する廃墟の建物も(撮影監督はユー・リク…

Nicolas Roeg, Walkabout(1971), Francis Jupurrula Kelly, Bush Mechanics series(2001)

何だか最近、ひとりで劇場に行くのが億劫というより苦痛で、研究会でしか映画を観てない。 それはそうとアボリジニものの2本、どっちもすごく異様で面白かった。 前者は、ピクニックの途中、父親から心中の道連れにされそうになったブルジョワ白人の姉と弟が…

『グレート・ビギン』クロード・ニュリザニー、マリー・ブレンヌー、2004仏

「グレート・ビギン」でフランス映画っていうから、きっとカリブの知られざるドキュメンタリーなんだなと思ってケーブルテレビの番組を録画した。 アフリカ人のグリオが語りを始めるのでそのまま見ていたら、火山から溶岩が流れ、ヒトの精子と卵子が結びつき…

レオン・イチャソ『苦い砂糖』

一昨日はA大学とその周辺の往復1万2000歩(しかも下駄で)。 昨日はB大学との往復4500歩。 地下鉄に乗らないと調子がいい。 ドミニカ共和国で撮影・制作された映画Azucar Amarga/Bitter Sugar(1996)を観る。 監督のレオン・イチャソはアメリカへの亡命キ…

ペドロ・アルモドバル『ボルベール』

緊張がとぎれたところへ、霧雨と車内冷房のダブルパンチで発熱。 満身創痍で朦朧としながら、アルモドバルの新作を観る。 死んだはずの母とその娘とそのまた娘。 久しぶりにグサリとくる、アルモドバル十八番の女系ものだ。 ライムンダ役を演じるペネロペ・…

ヴェルナー・ヘルツォーク『コブラ・ヴェルデ』(1987)

ブラジル最後の奴隷商人を扱った映画で、ブルース・チャトウィン原作。 奴隷貿易といっても、ブラジルは1888年まで奴隷制を敷いていてその末期の話だから大して大昔ではない。 ヘルツォーク=キンスキーのコンビなど20年ぶりぐらいに見た。 砂埃にまみれた山…

地球映像ネットワーク上映会「猿も我が家族」「トナカイと私」

時々通る道沿いに地球映像ネットワークというNPOがあって、前から気になっていた。 不定期で自然もの、動物ものの映像を上映しているのだが、昨日もやってたのでふらりと立ち寄る。 一本目は、インド版村崎太郎・次郎という感じ。 聖なる猿山の風景は美しか…

NANA

テレビでやっていた『NANA』がかわいくて全部見てしまう。 作品の質・内容の深さとかいうことより、「現役」としてリアルタイムで見た人には、何十年経っても懐かしく残るタイプの映画なんじゃないかと思った。 中島美嘉の「彼」っぽさと女の子っぽいはかな…

クリント・イーストウッド『ミリオンダラー・ベイビー』

準備しなければいけないことがいっぱいで時間との闘いをしている途中、東京12チャンネルをつけたら、吹き替えで『ミリオン・ダラー・ベイビー』(2004)をやっていて、つい全部見てしまう。 あまりに打ちのめされ、号泣。 たくさん読み進めなければいけないマ…

ラデュ・ミヘイレアニュ『約束の旅路』(2005年、フランス)

試写。原題はキャッチコピーに生かされている通り、Va,vis et deviens(行け、生きろ、生まれ変われ)。80年代ロシアのすばらしい名作『動くな、死ね、蘇れ』を意識してるのだろう(そういいつつ、あの監督の名がどうしても出てこなくて気持ち悪い。たくさん…

ジャンニ・アメリオ『家の鍵』

心身に障害をもって生まれた15歳の息子パオロ(アンドレア・ロッシ)と、その出生以来離れて暮していた30代の父親ジャンニ(キム・ロッシ・スチュワート)の出会い。 ベルリンの病院で治療を続けながら、互いを知ってゆく。 二人の関係に時に介入しなが…

メキシコ・ドキュメンタリー映画祭(再)

後輩を伴って『ムーシェ:アタシたちの楽園を求めて』を鑑賞。 やっと見てよかったと思える一本に出会えた。 女丈夫で有名なサポテカ族が住む町のムーシェ(ゲイ)たち。 刺繍が豪華な伝統衣装でお洒落してるのがかわいい。 胴衣は黒地にグリーンの木の葉、…

メキシコ・ドキュメンタリー映画祭

『メキシコ女性刑務所/塀の中の物語』、『メキシコの魂を唄った男/ホセ・アルフレド・ヒメネス』を見る。 途中までは期待に胸を躍らせていたのだけれど、何年ムショ暮らしでもいいから子供が欲しいという受刑者や、才能があるからといって破天荒な生き方を…

エルマンノ・オルミ、アッバス・キアロスタミ、ケン・ローチ『明日へのチケット』(2005年、イタリア=イギリス)

先日、試写会が満員で入場できなかった映画のビデオ。 ドイツのどこかからイタリアの南のほうまで走る特急列車の乗客たち。それぞれの局面での主役を次々にバトンタッチするかたちで物語を引き継いでゆく。ルイス・ブニュエルの『自由の幻想』を思い出すスタ…

溝口健二『残菊物語』(1939年)

ちょうどいい時間にたまたま恵比寿にいたので、溝口健二没後50年特集を観る。先日のテレビ放映でちょうど見逃した一本、しかも蓮実重彦が朝日新聞でベスト1に挙げていた一本だったので。 テレビで観てあんなにどれも面白かったのだから、映画館のスクリーン…

侯孝賢『百年恋歌』(2005、台湾)

ホウ・シャオシエン新作の試写。1966年、1911年、2005年の台湾を舞台に、スー・チー、チャン・チェン演じる男女が三様の恋愛を生きる。 恋愛模様もさることながら、時代ごとの音楽が被さるのが印象的。たとえば66年ヴァージョンだったら、ザ・プラターズの「…

フーベルト・ザウパー『ダーウィンの悪夢』(2004年、フランス・オーストリア・ベルギー)

平日の試写とは思えない混雑の中、パイプ椅子で見て肩が凝ったけれど、見てよかった。 かつて多様な生物の宝庫ゆえ「ダーウィンの箱庭」とも呼ばれたタンザニア・ヴィクトリア湖の現在を追うドキュメンタリー。 60年代頃、ちょっとした試みで放たれたバケツ…

フランソワ・オゾン『ぼくを葬る』(2005年、フランス)

末期ガンで余命わずかと宣告されたファッション・カメラマンの男(31歳、メルヴィル・プポー)が実際に死ぬまで。 祖母(ジャンヌ・モロー)を除き、誰にも病気を告げないまま、恋人や家族たちに自分なりの別れをし、インスタント・カメラで写真を撮り、最後…

ソクーロフ『太陽』2004年

昭和天皇の描写といっても、多くは作り手の想像なのだし虚構なのだし、それを何ともいえないのだが。 イッセー尾形の「おかみ」は、確かに私の知っている昭和天皇とよく似ていた。表情や口の動かし方、しゃべり方。でもその多くは戦後、メディアに登場するよ…

ルイス・ブニュエル『欲望のあいまいな対象』

ルイス・ブニュエルの『欲望のあいまいな対象』を久しぶりに観る。1984年に有楽シネマで観て以来何度となく観ているけれど、ネズミ捕りの場面、ハエの場面、子豚の場面など、ずいぶん忘れていた部分があり、楽しめた。今日見直した理由は、わりあい身近な学…

ギ・デローリエ『ビギン』(2004年、仏)

Guy Deslauriers, Biguineもう限界に体がしんどくて、大学に行く代わりに近所で調べものを済ませていたら、偶然見たかったDVD、Biguineを見つける。ユーロがずっと高くて、なかなかネットで買えないでいたのだ。 ビギンは19世紀後半、パリから来たダンス音楽…

ラース・フォン・トリアー『マンダレイ』(2005年、デンマーク)

というわけで、予定が狂ってしまったので、前に知人から勧められていた映画を見に行く。映画館に入っても、序盤は頭のなかを日本戦のことがぐるぐるしてしまい集中できなかったのだが重要かつ演劇的な演出が興味深い映画。 舞台は1930年代のアラバマ。閉鎖的…

ハンク・レヴィン他『ジンガ』

2回だけカポエイラをやったとき(あまりのハードさに2回で挫折)、練習を通じて叩き込まれたのが基本の動きであるジンガ。「体が揺れる」という意味のポルトガル語で、フットボールで相手をかわすフェイントの足さばきのことでもある。「ジンガとは、苦境を…

『スペース・カウボーイ』

今日は皆既日食。エジプト・サルームからのネット中継を見ようとするも、うまく行かず(衛星の混雑によるものだったらしい)。部屋の電気を消して去年の録画映像を見たけど、細い輪のずれと消滅と再出現の変化が何とも美しい。一度、生で見てみたい。代わり…

フィリプ・レンチ監督『プラハ!』(チェコ、2001年)

五輪に合わせて、スピルバーグの『ミュンヘン』が公開されている。1972年のミュンヘン五輪開催中、イスラエル選手団がアラブ系武装組織に殺害された事件をもとにしたドラマとのこと。 実はこの事件、私が物心ついて初めて意識した国際ニュースである。把握し…

ここのところお正月かクリスマスにはローストチキンを焼いて、実家に持っていっている。例年セロリ、しいたけ、松の実などを角切りのパンと炒めて、オイスターソースで味つけし、お腹に詰めた中華風なのだが、今回は趣向を変えた中身を用意してみた。 にんに…

ヴィム・ヴェンダース『アメリカ、家族のいる風景』

脚本・主演ともにサム・シェパード。映画スター・ハワードが西部劇撮影中に失踪、30年前に行きずりの恋愛をし、息子をつくったウエイトレスの女(ジェシカ・ラング)をたずねてモンタナの町に現れる。 『ブエナ・ビスタ・ソシアルクラブ』を三回続けて観て以…