ジャ・ジャンクー『長江哀歌』(中国、2006)

みんながいいという、噂のジャ・ジャンクーを観に行く。
なるほど長江のたゆたう青い水のロングショットは地形的な映像だけで歴史のスパンを感じさせ、アンゲロプロスを連想させる。
それに煙るような灰色の背景、崩落する廃墟の建物も(撮影監督はユー・リクウァイ)。
舞台はダム建設で次々集落が水没し、人々が散ってゆく三峡の町・奉節。
音信不通の夫を探しに訪ねてくる妻の挿話と女優の佇まいがいい。
チョウ・ユンファの物真似でしかしゃべらない16,7の男の子と主人公のおじさんのやり取りもよかった。
(こんな辺境の町の日常にケータイ――着メロとかアドレス帳とかの機能――がこれほど浸透している不思議さ。おじさんと少年の、着メロお国自慢歌比べのエピソードもいい。)
ところどころ唐突にマジックリアリズム風の場面があるのは、全体のバランスとしてあまり私は感心しなかったけれど。