フランソワ・オゾン『ぼくを葬る』(2005年、フランス)

末期ガンで余命わずかと宣告されたファッション・カメラマンの男(31歳、メルヴィル・プポー)が実際に死ぬまで。
祖母(ジャンヌ・モロー)を除き、誰にも病気を告げないまま、恋人や家族たちに自分なりの別れをし、インスタント・カメラで写真を撮り、最後はひとり浜辺へ。
自分の死期を知ったときどうふるまうかという提言としては、考えさせられるものがある。
ただ全体の印象としては弱い。不妊の夫婦(ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ)に子種を残すエピソードや恋人との経緯などに緊張感が感じられない。
全体的に映画が不振のフランスで、セドリック・クラピッシュフランソワ・オゾンだけは何となく気が合うし、毎作それなりの質を維持しているように思うのだが(小粒だけど)、オゾンはやっぱり、老いのテーマを追求したシャーロット・ランプリング主演の『まぼろし』が一番ぐっと来た。
いとうせいこうが言うとおり、ベランダーは水やりで秋を感じる。ゴーヤの葉がところどころ黄色くなり、実が小さいまま熟してしまうようになった。ハイビスカスは今も花をつけているけど、どんどん葉が落ちる。