泥のビスケット

昨日付の毎日新聞によれば、食料価格高騰で暴動が起きたハイチの首都ポルトー・プランスのスラム街シテ・ソレイユでは、人々が高い米や大豆に代え、泥のビスケットを買い求めているという。
http://mainichi.jp/select/world/news/20080602ddm001030082000c.html
ビスケットは、塩分を含む泥に小麦を混ぜて焼いたもの。
もともと妊婦などが食していたらしい。

他のサイトを調べると、ビスケット用のこの泥はハイチ中央部の平原で採取される黄色い粘土で、妊婦や子供がカルシウム源や酸を抑えるため食してきた。

中国漢方の古典『傷寒論』か『金匱要略』のどちらかには、妊婦が竈の土を食べる話が出てきた覚えがある(どちらも興味深い症例にあふれていて、ひと頃愛読していた)。
つまり漢方の生薬のひとつとして数え上げられている。
鄭義の小説にも、舞台は近代だけれど土を食べる場面があり、中国では土を食べる伝統があるのかと思った。
というか、貧しいからにしろ何らかの栄養なり薬効があるから食べるのだろうから、それはどんなものなんだろうと思った。

カリブ海のハイチで土を食べるというのは知らなかった。
ハイチの土といえば、森林を無理やりきり拓いて「えぐられている」というイメージしかなく、とてもそこに滋養があるとは思えなかったから。
実際のところ、どうなのだろう。
民間医療に属するのかもしれないけれど、やはり食べるに足る養分などほぼないのではないかという気がしてしまう。
泥ですら腹に入れないよりましというところまで、追いつめられているということではないのだろうか。
泥を漉し、天日干しにしただけだというので、衛生的にも問題ありだと思う。