明日ヨン様に会いに行く

友人と話していて、思いがけないシチュエーションで出会った著名人は誰か、誰が実際オーラを放っていたかについて盛り上がる。
芸能人で思い当たらないのは、それほどの人物に会ったことがないせいだろうか。
芸能人ではないけれど、強いて挙げれば蓮実重彦先生かな。
あまりの存在感ゆえ、何を話していいかわからないほど緊張してしまったことが一度ならずある。
それとも単に、物理的に巨大でいらっしゃるせいだろうか。

ペ・ヨンジュンとかテレビで見てても何がいいのか全然わからないけど、実際会ったらすごいっていうよね、と友人にいうと、そういえば明日会うことになっていると返されて、さすがにびっくりした。
ヨン様って、今日本にいるんですね。
ちなみに彼女はチェジュウの通訳をしたこともあり、この女優のほうは全然だということだった。

神楽坂の裏通りを歩いていてふっと顔を上げたら、向かいの家から細木数子が出てきて目が合った。
いかにも悪辣オーラを放っていそうな人だけれど、洗いざらしのエプロン姿で、何だか孫に甘そうな(いるのかは知らないけど)人のいいおばあちゃんという感じで意外だったのを覚えている。

皇族で間近に見たのは、皇太子(京都駅で)とその弟(青山のカフェで)と妹(近所のスーパーで)だが、いずれも後光は射していなかった。
むしろ妹など、気配を消すことに長けていたような。

思いがけないシチュエーションといえば、20年ぐらい前、新潟県の山奥を訪れた時のこと。
もう何郡の何村かも忘れてしまったけれど、夜することもなくぶらぶらと散歩していると、藪の奥で盆踊りをしていて地元の人々がひっそりと踊っている、その踊りの輪のなかになぜか浴衣姿のフランソワーズ・モレシャンがいた。
今考えても夢のようで、最近同行した友人に聞いてみたがそんな記憶はないという。
しかしその前日だか翌日に、清流のほとりでものすごく美味しい若鮎をごちそうしてくれた金持ちそうなおじさんに、後になってしつこく何かの勧誘をされたことは覚えていたから、たぶん事実なはずである。

人生最初に出会った著名人は、幼少時に選挙カーで自宅前にやってきた立川談志だ。
「たてかわだんしー、だんしだんしー、だんしがだんちにやってきた、ありがとうありがとう、ごせいえんありがとう」という声と節回しとその時の周囲の景色は、今も鮮明に記憶している。