葬列

親しい者たちとの一夜が明けると、パパの亡骸はなつかしい家を後にする。ちょうど今から半世紀前パパがつくった政党の、現役の党員たちが棺をかつぎ、人々が待つ首都に向って歩み出す。白を纏った党員たちは、片方の手に深紅のバリジエを掲げている。細い首の優雅な鳥とも、鋭利な剣とも見まごうようなこの花は、党のしるしに長年使われてきた熱帯産の植物だ。通りには何万もの島民たちが詰めかけている。小さな子供たちもいれば、パパと同じ時代を生きてきた年寄りたちもいる。手には「ありがとうパパ」と書かれた紙や在りし日のパパの写真。葬列が立ち止まるとオーケストラの演奏が始まり、歌い声も聞こえてくる。厳かな雰囲気につつまれているが涙は少ない。むしろ空気は温かく穏やかだ。少女たちの一群が党の色、緑と赤のスカーフを振っている。葬列は庶民たちの集落を通り抜ける。トレネル、テキサコというような。そしてまた、島民たちが誇りに思う大通りをねり歩く。ジャン・ジョレス大通り、エミール・ゾラ通り、ネルソン・マンデラ大通り、それからヴィクトル・ユゴー、ヴィクトル・シェルシェール、アベ・グレゴワール…。行進は三時間と予定されていたのだけれど、ひと目棺を見たいと待ちうける群集は引きもきらない。そのため急遽コースは延長され、たっぷりと日暮れまで葬列は町中を巡り歩いた。町の南端にある目的地のディヨンは、市長だったパパが新庁舎が建つ以前オフィスをかまえていた場所だ。七時間ののち棺が到着するや歓呼の声が沸きあがった。

(事実から構成しています)