阿部和重「課長 島雅彦」『新潮』11月号

痛快のひと言。余裕のある場所からの無責任なおもねりは、理解を装っても当事者には敏感に感じ取られるものだ。阿部和重芥川賞を取ってなお、マイナーであることの実感を苦しんでいるかに見える。
この作家の、自分の男の子っぽさとの折り合いのつけ方も好きだ。居直ることもなく、おもねることもなく。男の子っぽい小説を書けばピカいちだし支持もあるのに、その巧さに甘んじようとは考えないで足掻いている。本人の苦しい実感と自省の念とが共振している感じがある。
顰蹙課長に負けないでがんばってくれ、阿部和重