マース・カニングハム死去

ニューヨークのダンサー、コレオグラファーマース・カニングハムが亡くなった。
享年90歳。
マースよりピナのほうが先に、しかも立て続けに亡くなるとは思いもしなかった。

動いて、踊っているのを現在のこととして見たことがある人がもういないという不可解さ。
古い映画の画面の中をとぼとぼ歩いている犬や猫を見るとき、今はもう絶対に存在しないと思って胸が締めつけられる感じと似ている。

折しも数日前、先のことでお手紙を交わしたばかりの編集者の訃報を知って茫然とし、死者にとって未来のプロジェクトとはどういう意味があるのだろうと考えていたところだった。

「カフェ・ミューラー」や「ダンソン」でくねくねと踊るピナは、黄泉の国から来た人のようでもあった。
マースが踊るのを見たとき、すでに彼は70を過ぎていて、舞台にすっと立つだけでどこかユーモラスな好ましさがあった。

こんな本があったことをかつては知っていたのに、すっかり忘れていた。
長い時間生きていると、いろいろつながってくるものである。

カニングハム―動き・リズム・空間』
作者: ジャックリーヌ・レッシャーヴ, 石井洋二郎
出版社/メーカー: 新書館
発売日: 1987/08
メディア: 単行本