抗がん剤とヅラ

一年ぶりに会った友人がナチュラルな感じのベリーショートで現れたので、「すごいリアル」と驚くと、これは正真正銘地毛だという。
一年前に会ったときは、これからやる抗がん剤治療に備えてお洒落なヅラを探しているといっていたのだが、約半年の治療が一段落してふつうに生えてきたそうだ。
抗がん剤治療で髪をうしなう女性の苦悩については近頃メディアでよく取り上げられているので、半永久的な問題のように思っていたが、そういうわけでもないのか。
…という話題から、あれは本人より周りがショックなのだとか、男が女性の髪に過剰に幻想をもっているからこういう取り上げられ方になるのだとかいうことをひとしきり話す。

友人の説では、リアルさを追求したウィッグはたいていダサく、いかにも「ヅラ」といった感じの安いヅラのほうがよほどお洒落なのだそうだ。
それで39800円の「安い」ヅラを半年間愛用しており(リアルなウィッグは数十万円以上する)、今でもかぶりたいほど気に入っているものの、坊主頭だと大変心地よくフィットするが、地毛があると着こなし(?)がうまく決まらないらしい。
そして地毛が一度全部抜けてまた生えてくるにあたり、白髪の部分はどうなるのかと思っていると、白髪があった同じ場所からまた白髪が生えてきたのは残念だったが、もともとの友人の硬い髪質とは違った細くふわふわで柔らかい毛が生えてくるので、友人はカットしてしまったが、その柔らかな質感が気に入ってそのままロングにしてみる人も多いという。

遠くない将来自分にもあるかもしれないこととして、興味深く聞く。
私など、髪型を少し変えただけで何とかいうゲームの何とかいうクリーチャーに似ているだ、なんだかんだと学生に騒がれるので(まるで中学生のような大学生たちに教えているので)、スキンヘッドやヅラで教室に現れたらどんな事態になるんだろうか。
…と心配していたら、それはむしろショックを受けて絶句するだろうと別の友人。
他人にとっては、やはりそういうものかもしれない。