[カリブ][フランス]文学のマルチニック、政治のグアドループ

先日、カナル・プリュスで放送されたRomain Bolzinger制作のドキュメンタリー番組『マルチニックの最後の主人たち』Les derniers maîtres de la Martinique(フランス語、50分)。
この放映が、マルチニックでのスト、デモの一因になったと友人が教えてくれた。
http://www.fwiyapin.fr/2009/02/regardez-les-derniers-maitres-de-la-martinique/
焦点となるのは「ベケ」Békéと呼ばれる、かつての白人農園主の末裔たちで、島では彼らがいまだに企業家として経済的覇権を握っている。
彼らが露骨に人種主義的発言をする場面はショッキングだ。
本国と島でどれほど物価の差があるか、同じ商品の値段比べの場面もあり、実態がよくわかる(私はここまで格差があることに気づいていなかった。やはり暮らしていないとわからない)。

同時に、グアドループとマルチニックの違いも感じる。
今回のストライキグアドループ主導で起こり、各労組をひきいるLKPの統率力がきわだつ。
同じカリブ海の海外県でありながら、グアドループはこれまでも政治運動のさかんな島であり、80年代までは独立派のテロなども複数見られた。
グアドループには黒人系住民のほか、マルチニックよりはるかに数の多いインド系や白人もいるが、白人は「ベケ」ではなく、近年になり移住してきたフランス人だ。
(少し訂正:現在でもグアドループの白人は「ベケ」と呼びならわされているようだが、その多くが奴隷制廃止後に移住してきたフランス人だ)
一方マルチニックでは、(フランス革命時に島が一時的に英軍に占領され、ベケがギロチンを免れたため)元ベケと元奴隷という奴隷制時代からの構図が維持されており、彼らはつねにその物語のなかにいる。
今回のような場合も、まずそれがワンクッションとなるのである。
そこには、エメ・セゼールに代表される島の偉大な文学者の存在も関与しているのは間違いない。
文学・思想のマルチニック、政治のグアドループという構図はやはりある気がする。

現実の話としては、観光業にはすでに相当の打撃となっているようだ。
しかしこうした話題の記事を読んでいると、必ず同じページにグアドループでリゾートしたいならどこどこ、というような広告が入る。
たぶん勝手にキーワードを拾って入るのだろうけど、どうせ今行けないのに皮肉なことだ。