それでも私は五輪を観る(3)

自らがもつ世界記録更新(9,96)でのウサイン・ボルト100メートル優勝に続き、女子100メートルでもシェリー・アン・フレイザーが金、シンプソンとスチュワートが同着で銀とジャマイカ勢が陸上短距離を独占。
短距離といえば断トツに速いアメリカ人が必ず優勝というのがこれまでの常識だったが、それがジャマイカ人に変わりつつあるんだろうか。
前回アテネ大会のベロニカ・キャンベルあたりから兆しはあった。
いや、52年のヘルシンキ大会ので優勝したジョージ・ローデンという選手もいたが、それは独立前の大昔。
ジャマイカといえば、ブロンズ・コレクターのマリーン・オッティが長らく活躍していたので印象に残っているけれど、ここまでは強くなかったよな(今は移民してスロベニアの選手になってしまった)。

ジャマイカ陸連のアリス会長が「ジャマイカ人の9割はナイジェリアやガーナなど西アフリカの起源をもち、短距離の能力は遺伝的なもの」と説明していたが(スポニチ)、それなら周りの島々もみんな同じ条件のはず。
(確かにみんな強くて、トリニダードとかアンティーガとかが2位、3位に来ることが多い)
ジャマイカというと私のイメージはマルーン(逃亡奴隷)なので、逃げてばかりいたから足が速くなったんだろうかとつい思う。
だってウサイン・ボルトアサファ・パウエルに逃げられたら、追手は誰も捕まえようがない。

…などというわけはなくて、小学校から国を挙げて陸上教育に力を入れているそうだ。
山がちな島だから、練習といえば坂道ダッシュで、自然に筋肉が鍛えられる。
ナショナル・ボーイズ&ガールズ・チャンプスという日本の高校総体にあたる陸上大会が毎年春に大々的に行われて盛り上がり、ここには世界からスカウトマンが訪れるという。

最高のコンディションで極端に速く走るとき、人は顔の筋肉がゆるんで頬や口の周りがぶるぶるになっていることに気づく。