ゴシップの整理

サルコジ大統領とカルラ・ブルーニ(イタリア人でフランスで活動しているのに、日本ではなぜか「カーラ・ブルーニ」)の恋人関係が報道されているけれど、結構好きな歌手で、よく授業でCDを聴かせていたりしたので「へえ」というくらいの感慨をもった。
軽くしゃがれた声も曲の感じも好きだし、特にLe toi du moiとか、フランス語の対となる単語をおぼえてもらうのにもいいのだ。
セシリア前夫人は「スペイン組曲」の作曲家イサーク・アルベニス(スペイン人)のひ孫だが(セシリアさんもユダヤ系?)、サルコジは音楽コンプレックスがあるのだろうか。
今回の報道で、カルラ・ブルーニの姉がヴァレリア・ブルーニ・テデスキと知った。
明日へのチケット』と『ぼくを葬る』で、夢見る目つきがいいなと思っていた女優だ。
映画監督でもある。
カルラ・ブルーニが数年前に略奪愛した相手はラファエル・アントヴァン(アントーヴァンEnthoven)という若手の哲学者だが(知らないな)、その妻は小説家ジュスティーヌ・レヴィ(これも知らないな)、彼女は哲学者ベルナール=アンリ・レヴィの娘である。
つまりBHLの妻である女優アリエル・ドンバールの義理の娘ということになる。
ドンバールといったらエリック・ロメールの映画でおなじみの脇役女優。
冴えない女主人公の横でわかりやすい金髪美人としてツンツンしてそうでいて、意外と気立てがいいこともある(という役どころ)。
ラウール・ルイス監督『見出された時』の訛りの強いアメリカ婦人の役も印象に残るが、この女優は当然フランス人かと思っていたら、コネティカット生まれのアメリカ人だった。
ラファエル・アントヴァンの父親はジャン=ポール・アントヴァンというグラセット社の編集者で、BHLの担当なのだそうだ。
何と華麗な人間関係であることよ…

BHLといえば、反ユダヤ的な発言がしばしば問題になる黒人コメディアン、デュードネのお笑いパフォーマンスをDailyMotionで見ていると、BHLなど固有名詞も早口の会話に挟まれるのだが、私程度のフランス語力ではどうにもついていけない。
そういったらある先生が「じゃあ見てみるよ」とおっしゃっていたが、その立ち話の中で、時事的な、というか政治的な面白い話をいろいろ聞いた。
サルコジが組閣にあたって野党からずいぶん思い切った登用をしたように見えるが、その多くがユダヤ系であること。
IMF理事のストロスカーンなどもそうなのだな。
サルコジの政治行動が、彼自身のユダヤ主義というよりは、票田との関係でプロ・イスラエルとして表れること。
ユダヤ主義、反ユダヤといっても、それぞれ内部で複雑に分裂していて一言ではまとめられないこと。
フィンケルクロートのように民族主義を煽る知識人もいれば、それを批判するのもまたユダヤ系知識人であり…
19世紀終わりから20世紀初めにかけて共和制を推し進めたのはユダヤ勢力だったが、今そこに息苦しさを感じ、多文化主義といいだしているのもまたユダヤ勢力だということ。
また多文化主義などというその意図もさまざまで、排除に向うことも当然あり、一個人のなかでさえ分裂している要素があるということ、などなど。

それでカルラ・ブルーニだが、自分がフランス人だったらサルコジでなくロワイヤルに投票していたといっているのでびっくりした。
自分が自民党になんか投票したくないと思っているのに、安倍晋三小泉純一郎を支持している人とつき合うことが可能だろうか?
というかこの場合、野党支持なのに安倍晋三小泉純一郎本人とつき合うということだろう。
断固としてありえない。
……とまずは思ったが、そうだろうか?
やっぱり人間、そういう理屈では説明のつかない惹かれ合いもあるのかな……
でもきっと、いずれ理屈とか譲れない信条とかとの折り合いがつかなくなって、ぐちゃぐちゃな関係になると思うな。
実はどちらもそうした方向性などどうでもいいと思っていれば別だろうが。
というかそもそも、セレブリティの人たちはそんなこといちいち考えてはいないのだろう。