漢方、ブルーベリー

何年かぶりでばったり漢方の先生に会ったら、働きに来てくれないかといわれた。
さすがにそんな時間はなくて無理。
以前の住宅地にあった地味な店から表通りに進出したとたん、やたら繁盛してそうな先生。
ついに雑誌でメジャー・デビューもして、びっくりしてたところだった。
患者も増えて大忙しだが、家賃が高すぎて自分の給料が出ないとか。
そうか、やっぱりそんなに高いのか、そのうちこの辺でカフェでも開きたいと思ってたんだけどな。
相当前のことになるけど、プルーストの隠喩と陰陽五行説にはつながりがあると思いますとかでまかせの話をして、即採用になって、次の日から白衣を着て調合アシスタントをしていた。
自分の体のこととして漢方にはとても興味があったので、生薬や薬湯の名前とか効能をどんどん覚えて、先生にもお褒めいただいた。
患者さんにもよく薬剤師と思われた。
後にも先にも、人生で人から理系と思われたのはあの時期だけ。
変装してる気分が楽しかったなー。
ある大雪の日に「アシスタント募集」の張り紙を見たのだ。
突然の雪のためひっぱり出した古いテニスシューズを履いて、殺伐とした果てしない気持ちで家までの道を歩いている途中だった。
雪が靴の中にも入って、冷たくてびしょ濡れで。
泣きそうになりながら家に着いて、靴を裏返したら両方とも底がなかった。
靴の上部だけを足にはりつけて、足裏は靴下のまま雪道を歩いてたのだ。
次の日歩いてきた道をたどったら、ゴムの靴底が2枚、道路の上に落ちていた。
今年はついに雪はなさそうだけど、今日は一瞬あられが降った。

園芸店を物色して、ブルーベリーの鉢植えを買う。
ブルーシャワーという品種。
ブルーベリーは丈夫で育てやすく、プランターでも実がなると聞いたから。
うちのベランダは基本ジャルダン・クレオールで熱帯ものが中心なんだけど、もともとはバラ色さんざしを中心に寒いところの植物を集めた「プルースト・コーナー」もあった。
ところが私が過保護過ぎて水をじゃんじゃんやる傾向があるため、寒いところのものは根腐れし、熱帯ものばかりが育つという結果になったのだった。
1000円以上お金を出したものはすぐ枯れるというジンクス(?)もある。
1890円もしたブルーベリー、がんばって育てたい。

石井桃子さん、100歳おめでとう。
こんな素敵な100歳になれる人はいい。