おまえ、幼年時代(マクシマン)

「きみ」とか「きみよ」の方がいいかな。
「きみ」というと「ボク」という甘えた一人称が対応するからちょっとな。
グアドループの火山のふもとに育った少年の話。
四大元素が四つの章のタイトルをなす。
まだ「火」の章の途中だけれど、二人称の小説に弱い私は冒頭から泣いてしまう。
根が浮き上がって100年以上も経つアコマにいまだ樹液が駆け巡り、野生の蘭や羊歯が巻きついている。
その幹に皆がイニシャルを彫っていくのだが、5歳のおまえは「s」を彫ってと父親に耳打ちするのである。
なんで「s」?とびっくりする父親。
soleil(太陽)の「s」なのだ。
小さなリュックに熊のぬいぐるみを入れていて、それを火口に投げ入れるところも好き。
読みながら、バッステール山間部の植生、ハワイ島の火山、溶岩、それから硫黄の匂いなどが目の裏を逆巻いている。