古事記の世界

自我を極力ニュートラルに保って、ようやく正月休みを切り抜けた。
今日から日常に戻ったけれど、休み中依存していた読書(4、5冊を同時並行)が切り上げられない。
特に『口語訳・古事記』が面白くて、一気に読んでしまう。
ラブレーなんかよりずっと面白い。
糞尿やゲロや死体の耳とか肛門から、どんどん神様が生まれていって。
神武天皇のお母さんなんかサメだし、そのお妃は大便をしている娘のところへ流れていった矢がホトを突き刺してできた子どもだし。
日本って「美しい国」とはほど遠い、すごく愉快な国だったんだな。
古事記のヒーローのひとり・大国主命の本拠地・出雲大社にはゆかりがあって、何度も行ったことがある。
輝くような日本晴れのある日、この荘厳な拝殿をバックに、時間に遅れてヨロヨロとやってきた疫病神のような老人がひとり。
頭は寝癖で逆立ち、式服のベルトを忘れてズボンはずり落ち、全身が酒臭い。
あまりの違和感と恥ずかしさとに悪い夢でも見ているようだったが、意外と古代の出雲大社はこういう世界だったのかも(この老人は近しい身内)。
以前読んだ原武史の『〈出雲〉という思想』の影響もあるけれど、私は天皇家直結の天照大神伊勢神宮)より国つ神の大国主命出雲大社)のほうにシンパシーを感じる。
あの論考では、伊勢神宮の空洞と出雲大社の構築という対比が面白かった。