口承伝統について

口承伝統とは何か?

「A・ハンペイト・バが言うように、「(彼/女は)たぶん長く沈黙したのちに、こう答えて、それ以上何も言わないだろう、『それは総体的な知なのです』と」。彼女はそう答えるかもしれないし、答えないかもしれない。というのも、ここで言われている「総体的な知」とは、現実には名付けえないものだからだ。
「少なくとも、名付けようとすれば、かならず、知の「文明化」したディスコースが手ぐすね引いて用意している多くの穴の一つに、ずるずると落ち込んでいく危険を冒すことになるからだ。
「「口承伝統とは何か」という質問は、答えをまったく必要としない質問−解答なのである。
「文明化した人に―「口承伝説」なるものを捏造する人に―その彼に、それを定義させてみよう。なぜなら、「口承」と「書き言葉」、「書き言葉」対「口承」は、「真」と「偽」の概念同様に、イデオロギーにどっぷりと染まってきた概念だから」

ほんとにそうだよねー。

「彼女は生を拵えだしているが、嘘はついていない。なぜなら、拵えだすことは、想像することでも、空想することでも、捏造することでもないからだ」
「彼女は、忘れ去られたものを復活させ、精神よりも長く生き延び、精神に取って代わろうとしているので[…]、精神だけに関する事柄―たとえば精神の伝達―などとはけっして言わないし、そんなものに満足できない。
物語を語る人は権力者だと、ずっと思われてきた。確かに、彼女は権力の生きた遺産に関与している。けれども彼女の権力は、精神を照らしたり、それを新たにするものではない。
それは火をつけると、すぐにまた消してしまう。慰めると同じように、やすやすと傷つける。それも、かならずしも精神を、というわけではない」

「彼女がもののを言うときは、私たちのおばあちゃんたちの語り(ルビ:ストーリーテリング)の精密さと魔力を受け継いでいるので、現実に存在するもののしか言わないということはない。
それが精密なのは、非常に柔軟性があると同時に厳密だからであって、ただ温存(ルビ:コンサーヴァティズム)するために正確でなければならないと思っているのではない」

ものののことは、norahにとってとても重要。

「死んだグリオットはひとりひとりが、燃え落ちた図書館全体だ」

ここ、気に入っている。