ジョアン・ジルベルト「The Bossa Nova 〜最後の奇跡〜」

開演予定時間は17:00、17:15頃にアナウンスがあり、「アーティストはまだ到着していません」とのこと、まただいぶ経ってアナウンス、「アーティストはまだホテルを出発していません」。
高齢(75歳)だから体調が悪いのかしら、などなどいろいろ憶測したが、この人の場合毎度のことと判明。
それにしても遅れに遅れ、開演は18:20だった。
まずはご挨拶。「コンバンワ、ゴメンナサイ」。へー、悪いと思ってるのか、かわいい。
最初の数曲は息が苦しげで、このまま打ち切りになるのではと心配になる。
20年ほど前、60年代の名盤「ゲッツ/ジルベルト」のLPレコードを聞き込んでいた。
独特の高めの声も曲も大好きだった。
その後、特にボサノヴァを好んで聞くことはなかったのだけど、ここのところ偶然のように聞いたボサノヴァ・ライヴが当たりだったため、ほんとに久しぶりのジョアン・ジルベルトを初めて生で聞くことになったのだが…
短い曲を次々歌ううち、徐々に調子が出てきたようにも感じる。背広にネクタイでかたまってしまったように俯いたまま歌う姿も何となく心配をそそるが、ギターは音色もリズムも問題なし。
ただ得意のやや高めの音域はいいけれど、それ以上だと苦しそうだし、低音部は息だけになってしまうことも多くて、カラオケで中森明菜の「ミ・アモーレ」を歌いだすときの私みたいだ。
(神様にそういうコメントすること自体、無粋なのか…)
それでも調子は終始上向き。私はボサノヴァの名曲というのは聞けばわかるもののどうもタイトルが覚えられないのだが、だんだんサンバ系でノリのよいナンバーになってゆく。
ドレミファソッラシッドの歌とか、ソヨーソヨーの歌とか、メウ・コラソンの歌とか、ガチョウのサンバとか、ソダンソサンバとか。
個人的にもっともよかったのは、アンコールの一曲として歌われた「イパネマの娘」。
「ゲッツ/ジルベルト」に入っているのと本質的には同じ声。
その同じ声が長い時間を経てたくさんのものを通過し、そうした痕跡を感じさせながら新たに、一度きりのアレンジで発する「イパネマ」には感動をうながされるものがあった。
コンサート終了は20:00。
ちょっと短い気もするけど、前回(2004)、前々回(2003)より体力も落ちているだろうし、そんなものだろうか。それとも気分的なものか。
あと3回も公演こなせるのか?(そういいつつ、明日は3時間ぐらいやったらくやしい)
高齢の偉大なアーティストのパフォーマンスというものは、往々にして微妙である。
自然な環境にこだわるアーティストの指示により、5000人ぐらい収容の東京国際フォーラム大ホールで空調を切られたのはつらかった。
私はもともと咳き込みを予想して保湿用のマスクを持参していたが、私以外にも酸欠の息苦しさから曲間に咳き込む人が多かった。すぐそばでイビキをかいている人には呆れた。