「ラマダンの夜」、グナワ・ディフュージョン

リーダーのアマジーグ・カテブは、アルジェリアの大作家カテブ・ヤシーヌの息子。
ということで何となく興味をもち講演会に行ったら、あまりにチャーミングでオーラに満ちた人だった。
メッセージ性の強い音楽の創り手ながら、単純素朴な活動家という感じではない。反グローバリズムブッシュ政権、フランスの移民政策を批判するにも、何となくグリッサンの「迂回」を思い出させる深さがある。
嗅覚が働いて、最低の体調と暴風雨にも負けず、クラブクアトロへ。
話し声とは別格の、腹に沁みわたる深い声。見たこともない弦楽器、金属製のカスタネット様の楽器がマグレブ伝統の音色を奏でる。
「グナワ」とは、16世紀、サハラ以南から北アフリカに連行されたバンバラ族やハウサ族出身の奴隷たちが、一度とぎれた記憶をもとに作り上げた音楽という。白人(ベルベル人)ながら、こうした音楽を再度自分たちのものとすることで、自らが被植民者であるばかりでなく、同時に植民者でもあったことを自覚したいとの話は印象的だった。
音楽はフォークロア色強い素朴な感じだったかと思うと、ラップになり、またダンサブルなリズムを刻む。ものすごい密度の二時間、終わったらボロボロだった体が少し軽くなる。
ライブの前にも後にも、アマジーグ本人と少し言葉を交わす機会があった。昨日の話がすごく魅力的だった旨告げると、日本の聴衆やあの場の雰囲気がすばらしく、こちらこそ感に堪えないと真剣に言ってきてくれた。哀愁に満ちた笑顔、いい。
サインしてもらった言葉、「Keep the power」。今の私にほんとにありがたい。
でもこういうふうに外に向かって光り輝く人って、傍にいる人のパワーを吸い取ったりするかもな。近くに寄ると傷つけられるかもしれない。
しかし、今日買ったCD(「スーク・システム」)の歌詞カードをあらためて読んでみるとかなり過激だ。