新学期前夜

頭と体を立て直すため、あまり明るくない分野の授業に出ようと決意、事務室に教室確認に行ったら「今学期の授業は金曜からです」と言われ、笑われる。どうりで校舎が閑散としてると思った。最近はもうやらないと思ったのに、久しぶりの大ポカ。
会社員の頃は、長距離通勤してやっと会社に着いたら休業日だったり、出勤すべき土曜日なのかわからず、クライアントを装って、「御社は今日は営業しておられますか」と守衛室に電話して確かめたりしていた。
しょうがないから図書館に行こうとしたら、キャンパス内にお洒落なガラス張りのカフェテリアとイタリアン・トマトのCafe Jr.がオープンしていてびっくり。
図書館での勉強って、飲み物や何かが近くにないから私はダメだったんだけど、これなら図書館で本を借り出しては向かいのここ、イタトマに移動して読書という循環が可能だなあとカフェラッテを飲みながら考える。桜や欅の木立ちを臨む、気持ちのいいロケーション。しかし柄谷行人の胸中は今頃いかに。
それより今週からの非常勤、まだ準備してないなんて私も偉くなったものだな。(嘘)
今学期のむずかしい方の授業では、フランス語圏の現代小説のアンソロジーを読もうと思っている。
まずル・クレジオの『モンド』は決まり。映画にもなっているから見せられるし。ル・クレジオ自身の育ったニース近郊のテラコッタ色と眩しい光が美しい映画だった、気がする。それからパトリック・シャモワゾーの『七つの不幸の年代記』(未訳)はどうにもむずかしいんだけど、これを読まなくては私としては話にならないので、副教材など使って盛り立てながら何とか読むつもり。
もうひとつぐらいやるとしたら、タハール・ベン・ジェルーンマグレブ出身だから植民地や移民のことなど話を広げやすいし、難度としてもちょうどいいかなと思って読んでみると、ホモソーシャルな男の友情話で何となく気に入らない(『友情礼賛』、未訳)。却下。
受講するのは女子学生ばかりなのだから女性作家も入れるとすると、アゴタ・クリストフマルグリット・デュラスかアニー・エルノーの選択。フランス語のシンプルさで選べばクリストフ、歴史的な背景の話などに広げやすいのはデュラスかしら。どの作家も際立った決め手に欠ける。
それともアンドレイ・マキーヌの『フランスの遺言書』か。現代のものではない、独特の手触りをもった祖母のフランス語と、シベリアの小さな町でそれを聞き続ける孫息子の話に個人的にはとても興味があるけど、学生には晦渋でとっつき悪いと思われるかな。