フランス・パリ郊外で始まり、地方にまで広まった暴動が二週間近くも続いている。数千台の車の焼き討ちだけでなく、ふたりの死亡者に加え、障害者女性が火傷を負うという事態にまで進んでしまった。
シラク大統領の声明に続き、ド・ヴィルパン首相は郊外に夜間外出禁止令を敷く必要があると発表した。実行されれば50年代末のアルジェリア戦争時以来のこととなる。
ことの発端は警察に追われていると思い込んだアフリカ系の二少年が、逃げ込んだ変電所で感電死したこと。移民の居住者が多い郊外での治安強化を強引なかたちで進めてきたニコラ・サルコジ内務大臣に批判が集まっている。
サルコジ氏はハンガリー移民の家庭出身でありながらトップエリートに登りつめた人物だが、経済政策などで手腕を評価される一方、「負け組」を徹底して切り捨てるそのやり方に私は以前から危惧を感じていた。
郊外に住む貧しいがゆえに落ちこぼれた少年たちを公けの場でracaille,くず、ごろつきと呼び、彼らを傷つける。非行少年はde'linquantと呼ぶべきであり、racailleなどではない。こんなときこそ、使う言葉は厳密にとド・ヴィルパンにたしなめられたが、こんなときはもちろん、公けの人間は常日頃からそのふるまいや言動に責任をもつべきなのだ。
軽いノリで他人の尊厳を傷つけ続けるということがどれだけ大きな恨みのエネルギーとなってゆくか、とてもよくわかる事件である。