ダニエル・ブルマン『僕と未来とブエノスアイレス』

ブエノスアイレスのガレリア(商店街)を舞台にした商店主たちのドラマ。主役は『ウイスキー』でちょい役だったダニエル・エンドレールで、ユダヤポーランド移民を祖父母にもち、ヨーロッパに渡りたいと考える青年を演じている。ポーランドをろくに知らない移民三世のアルゼンチン人というのが面白い。他にもこのガレリアにはイタリア人美容師や韓国人風水ショップオーナー、リトアニア系の若者などが住んでいて、世界の移民の寄せ集まりになっている。
やけに接近するカメラワークはやや疲れるが(試写上映のせい?)、アドリアーナ・アイゼンベルグやセルヒオ・ボリスなど俳優たちも味があって楽しめた。来春公開予定。
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後藤田正晴氏の訃報を知る。浮かれはてた選挙の直後に見識ある右派の論客が亡くなったのは象徴的。東京裁判を根拠とした靖国参拝慎重論には、政治家が本来もつべき冷徹な歴史意識が感じられ、世間に蔓延している感情論(右派左派双方それぞれの)とは一線を画していたように思う。