ルイ=ジョルジュ・タン氏講演

ルイ=ジョルジュ・タン氏のお話を聞きに行く。
少人数のこじんまりとした雰囲気の中、抽象的な理論というより、データを交えた具体的な話で面白かった。
CRAN(黒人組織代表議会)のスポークスマンであり、同性愛者解放運動の活動家であり、歴史学者でマルチニック出身。

2005年設立以来、CRANはこの30年間フランスでは発語を避けられてきた感のある「黒人」ということばをあえて表に出し、また人口における割合や職務質問される「黒人」の比率などの統計を出す、つまり「黒人」の存在を可視化する活動をおこなってきた。
すぐさま批判も出そうだが、外観のみで黒人・アラブ人は職質されがちという事実が明らかになり、その後、警察に職質の都度データを残すようにさせる動きにつながったなどの話を聞くと、じっさい具体的な成果はあるのだとわかる。

海外県出身者はアフリカ黒人に比べてマシという話を何度かされたので、出身地であるアンティユ社会の問題はどう捉えているのか、2009年のストも社会的・人種的問題だと思うが、CRANのメンバーとして介入はしているのかなどとうかがってみたが、「アンティユにもCRANの支部があって活動している」という答えぐらいしか得られなかった。
あまり個人的に思い入れはないご様子。
それよりフランス社会で最も弱い立場にあるところの黒人(確かにアフリカ黒人であることが多い)に寄り添い、じっさいにはかなりあるらしいアンティユ人とアフリカ人の亀裂を埋めようと尽力しているように感じられた。

メモも持たずに理路整然としゃべり続けていたのがすごい。
私などこの前の授業ノート、思いあまって原稿用紙100枚にもなってしまったというに。
みずから「黒人」といっているが、「タン」Tinという名字は中国系なのだと聞きびっくり。
ノラーの中国系の友達と同姓だってことだ。
それにしても、久しぶりに外国語ってものを聞いて新鮮だった(なんてドメスティックな生活)。