ペイル・ライダー

クリント・イーストウッドの映画(主演もしくは監督・主演)を三本もぶっ続けで観てしまう。
荒鷲の要塞』(Where Eagles Dare 1968)、『センチメンタル・アドヴェンチャー』(Honkytonk man, 1982)、『ペイル・ライダー』(Pale Rider, 1985)の三本。
イーストウッドのすぐれた映画作品はいくつもあるが、『ペイル・ライダー』は名作としてそれほど話題になってはいないような気がする。
でもこれ、とてもよくできているではないか。面白い。

観終わってわかったけれど、この人(イーストウッド)は牧師を装ったただの流れ者ではなく、死者だったのだな。
保安官の手下どもとの撃ち合いで、思いもかけぬ場所から撃ってくるこの変幻自在ぶりは、この世の者でないからということで納得できる。
それでも、いかにも超自然的なようにはまったく見せない。
『シェーン』のリメイクとも言われているが、『シェーン』ってそんな異界を扱う話だったろうか。
小学生の時観たきりなので、すっかり忘れてしまった。

このとてつもなく強いが生気のない男の背景には、真っ白な雪を抱いたすばらしく清らかな山脈がいつもあって、そのコントラストが印象的。
カリフォルニアの小さな町が舞台と理解していたが、撮影場所としてクレジットされているのはSawtooth National Recreation Areaというところで、地図で調べるとじっさいはアイダホ州の真ん中辺だった。
冒頭出てくる逃げまどう子犬の場面のカット割り、金鉱採掘者ハルの牧師への依存と屈託、疲れた母親の牧師への恋心といった心理描写、保安官らによる採掘者の処刑場面のリアリズムなど、各所がうまいなと観終わってから思う(観ている時はただハラハラしていた)。