ディベート

私が全然価値を置いていないものに「ディベート」がある。
ディベート甲子園とか、就活でディベートとか、何じゃそりゃと思っているが、なんと私はディベートの技術を教えている。
毎度、話の進め方に悩む。

ディベートとは、相手に道理があるかのように言いながら、結局は最初からの自分の意見を押し通すというテクニック。
ことばを交わす過程で相手からの影響を受け、自分の意見が変容してゆくダイアローグとは本質的に異なっている。
少し前に、誰かを引用しながら鷲田清一先生が書いているのを読んで、まったくそうだと思った。

とはいえ、初めから「こんなことは重要じゃありません」というわけにもいかない。
だから、ひと通りの説明と実践をした後で、社会的な損得でいえば得になる局面もあるテクニックだが、あくまで言語ゲームであって、個人と個人の関係に使うことは勧めない、それより他人からは大いに影響を受けてくださいといってはみるが、通じているかどうか。
彼らの美点を挙げるとすれば、信じ込む素直さやストレートながんばりなのだから、こういう二段構えもどうなのかなあと思う。

われながら意外なことを教えていると思うが、「『生命倫理』の授業をお願いできますか?」と言われた時の意外さはこの比ではなかった。
生命倫理って何? と後で友人にたずねると、『高瀬舟』とかやればいいんじゃない?と言われてますますわからなくなった。
同じ大学からは「キャリアデザイン」も頼まれたことがある。
キャリアがデザインできない人間だから、あんな回り道をして今こんななのではないか。
一度講師になれば、誰でも何でもいいのだろうか。
そのうちロボット工学とかC言語とか言われるのではないかと思っている。