藪からメールを送らないで

一度も会ったことはないが授業をとっていることになっている学生から突然にメールが届く。
文節ごとに漢字と助詞と選ぶべき文体のまちがいがあり、お願いごとの内容にも呆れはてるばかりだが、とりあえず文意はおおむね理解できた。
ただ頭のほうの一文だけはわからない。

「藪からですいません」って何だ?

西欧人によりきちんと整備されたプランテーション空間からではなく、対比的に呪術的要素の強いクレオール空間である手つかずの藪(Razye)の中などからメールを送って申し訳ないということだろうか。

だいぶ経ってから、もしかして「夜分にすみません」といいたかったのかもしれないと思う。
せめて助詞だけでも正しかったら、わりあいすぐ連想できたのだろうが。

しかしもっと後になってから、「藪から棒にメールを送ってすみません」の省略かもしれないと思う。
もしかしたら若者の間で「唐突に」のことを「藪から」というのが流行しているのかも。
髪が乱れることを「与謝野る」というような、古い事象やことばを新語に復活させた例?

結局意味不明だが、この部分だけ妙に気に入る。
この大学の名誉のためにいっておけば、他の学生は皆もっとまともな文章を書いている。

ところでシャモワゾーらによれば、伝統的なクレオール社会には、藪の中の薬草を用いるリメッド・ラジエ(藪療法)なる医療法があるそうだ。