背脂エスパニョル

明るい満月の宵。
買い物の途中、炙り屋を通りかかり、つい呟く。
アブリヤ・カンタード、アブリヤス・カンタード、アブリヤ・カンタード、アブリヤモス・カンタード、アブリヤイス・カンタード、アブリヤン・カンタード。
(以上、「歌う」の過去未来完了)
へー、背脂もあるのか、おいしそう。
背脂エスパニョル・エン・メヒコ、背脂フランセス・エン・モナコ、背脂ハポネス・エン・ハポン
こんなふうに遊べるなんて、やっぱり日本語と発音似てるんだな。
そんなことより、明日は接続法のテストだ。
どれだけ速いペースなんだろう。

今朝は久しぶりにくっきりとした富士山を見た。
空気がとても澄み渡っているのを感じる。
高台にある教室の巨大な窓の向こうに広がる新興住宅地と真っ白な富士山。
「贅沢だねー、早起きしてほんとによかったねー」と、あまり気にしていない学生たちにしつこく言い続ける。
普段は都心に籠っているが、やはりたまに川を渡ることは重要だ。

この前富士山を見たのは、一か月ほど前飛行機に乗ったとき。
日没の直前、オレンジと墨色の雲のなかにうずくまる真っ黒な塊としてだった。
あんまり熱心に雲を見ていたら、CAさんがあれが富士山だと教えてくれたのだ。
探していると思ったのだろう。
いや、私は飛行機から見える雲は一生でも見飽きないのだ。