歩行とトラヴェリング

ミシェル・シマンによるエリック・ロメールの短いインタビュー映像を見て、そうか、ロメールの映画というのはこんなふうに二人の人間がいつも会話しながら早足で歩いていて、しかも向こうからこちらに向かってくるのでもなく、画面を横切っていくのでもなく、縦横に通りの角を曲がり、斜めに渡り、振り向き、ひとりだけがくるりと背中を向け、背中の人と正面の人の組み合わせで相変わらず歩き続けるよなーと思った。
その時、車輪とともにあるトラヴェリング・ショットは、こちら向きの人物と等距離で下がっていったりしない。
そんなことは不自然だとロメールはいっていた。
無理をして等距離を保たないので、人物との距離はつねにさまざまに変化し、ぐっと遠ざかる時、なぜか雑踏の音が急に大きく感じられたりする。
そういうところがいいんだな。
とにかく、通りをずんずん歩くというのはいい。