[美術]エミリー・ウングワレー!

ポスターの色と点描に惹かれて行きたいと思っていた美術展、うっかり会期日程を忘れるところだったが、Mon pays natalのサイトがリマインダーとなって逃さずに済んだ。
すごくよかった!
信じがたいエネルギーの持続を感じさせる点と線と色とテーマ。
うわーと思いながら見入ってしまう。

エミリー・カーメ・ウングワレーは1910年頃、オーストラリア中央部のブッシュ砂漠地帯に生まれ、1996年に同じ地域で亡くなったアボリジニのアーティスト。
初めて絵筆をとったのが80歳近くになってから。
その後亡くなるまでの8年ぐらいの間に3千から4千点のアクリル作品を遺している。
イーゼルは使わず、地面に置いたキャンバスに四方から描かれる絵には天地の区別がない。
モチーフとなっているのは、すべてアボリジニ儀礼にかんするもの、そして故郷のアルハルクラ。
カーメという名は「ヤムイモの種子」という意味だそうだが、ヤムイモは彼女の「ドリーミング」で、それがあの想像を絶する、ひたすら線が分岐してゆく作品「ビッグ・ヤム・ドリーミング」となっている。
それから恐ろしい初期作品「エミューの女」(Emu Woman)。
私にとってはこの世でもっとも怖い鳥のひとつで、悪夢のテーマとすらなっている怪鳥エミュー(アンケレ)。
これもまたエミリーのドリーミングで、迫力ある点として構成されている。怖い!

溢れるような点々は抽象絵画そのものながら、花など具体的な何かをあらわしたものでもあるらしい。
写真に撮られたエミリーの故郷の砂漠にはミモザが咲いていた。
ミモザの花も点々化されているのかもしれない。

私など、絵を見ていても何をしていても、つい頭のなかで言葉が先にくるくると動いてしまいがちだけど、こういう人はどんな境地で絵を描いているのだろう。
どういう経路で指の先からあれほどエネルギッシュに色やモチーフが出てきて作品ができるのだろうか。
文字を知らず、美術教育も受けていないエミリー。奥深く不思議だ。

エミリーの言葉:
「すべてのもの、そう、すべてのもの、アウェリェ(私のドリーミング)、アーラチ(細長のヤムイモ)、アンカールタ(トゲトカゲ)、ヌタンイ(草の種)、ティング(ドリームタイムの子犬)、アンケレ(エミュー)、インテクウァ(エミューが好んで食べる草)、アニュールラ(緑豆)、カーメ(ヤムイモの種)、これが私の描くもの、すべてのもの」

これがすべてなんだ。
すごい…