追悼イヴ・サンローラン

先日、イヴ・サンローランが71歳で亡くなったが、フランス語授業の素材としてさまざまに登場していただける方であった。
誰もが知るその(カタカナでの)発音と実際の綴りから、「フランス語の多くは語尾の子音を読まない」の例として最適である。
その生い立ちと経歴から、フランスの植民地主義アルジェリア戦争・独立に話が進む。
戦後間もなくのフェミニン欲求全開なディオールジバンシー時代から60年代の直線的なサンローランへ、というモードのシルエットの画期的な変化に言及できる。
フランソワ・オゾンの『8人の女たち』(2002)を見終わってから、同じく主演のカトリーヌ・ドヌーヴがほぼ40年分若く、背中の面積が半分ぐらいの『昼顔』(1966)を見ると、ジバンシーからサンローランへの変遷が見事によくわかります。
で、どちらも選びがたく素敵(『昼顔』の衣装はすべてサンローラン)。

恥ずかしながら、映画の早口のフランス語などはよく聞き取れないことがあるのだが、複数の授業で同時に使うのにやむなくくり返し見ていると、ほぼ聞けるようになってくるのはいいことだ。
字義通りの訳ではなく「おおむねこんな感じのこと」という字幕特有の文字数制限のある訳の(前回見た時の)記憶がより効果を生んでいる気がする。
好きな映画をくり返し観ることは聞き取り上達の秘訣だと思う(今さらそんなこと実感ですか…)。

ところで、映画の衣装でもっとも「素敵!こんなの着たい!」と思ったのは、『気狂いピエロ』でアンナ・カリーナが着ていたまっ赤なニットの半袖ワンピースで、袖口が同素材のフリルになっているもの。
何とこの衣装を去年アニエスbがそっくりに再現していて、買いたい衝動をこらえるのが大変であった。
映画の中でいくら素敵だからって、人は(当人以外は)アンナ・カリーナではないのだから(しかも当時のアンナよりいったいいくつ年上なんだ?)。