ピナ・バウシュとヴッパタール舞踊団「パレルモ、パレルモ」テアトロ・ジーリオ・ショウワ

高さ5m幅14mの巨大な壁。舞い上がるサハラ砂漠のような赤い砂嵐。1920年代製の6台のピアノ(制作ノートより)。

うーん、一番気に入ったのは、天井から赤茶色の砂がざざっ、ざざっと断続的に落ちてくるところ、かな…

1989年12月初演。
天安門事件ベルリンの壁崩壊など、世界を揺るがす事件が立て続けに起きた年である。
冒頭の巨大なブロック崩壊は、もちろんベルリンと無関係ではない。

シチリア島はひょんなことから2度訪れている。
ピナが制作のため滞在したのと時代的には変わらない85年と87年。
アラブとヨーロッパが色濃く一体化したような禍々しい町パレルモを列車で出て、ギリシア時代の神殿のあるアグリジェントへ向う途中の渓谷に、日本で見るソメイヨシノとそっくりな桜が咲いていた。
今は2月だっていうのに。
パレルモの町を走る霊柩車が鮮やかな橙のグラジオラスで飾られていたのとともに、とても強く印象に残る)
舞台でも、崩壊したブロックを覆うように何本もの桜の木が落ちてくる。

前に浅田彰ピナ・バウシュ吉本新喜劇だと形容していて、関西人ってすぐそういう比喩を使うからキライと思ったけれど、まったく吉本だと思ったな、特に今回は。
それぞれ因果関係ゼロな、子供的な発想のギャグを、これでもかというまで反復するこの感じ、ドリフターズではなく吉本だな。

「過激な受け身」(小林康夫)を特質とするピナ・バウシュの作品は非常な危うさをもって成り立っている。
それを成り立たせている(いた)要素として、個々のダンサーの、体としての存在感はとても大きい(大きかった)気がする。

ちょっとこれまで観たピナ・バウシュのランキングをしてみたいと思います。

1.1980年 ピナ・バウシュの世界
2.山の上で叫び声が聞こえた
3.フェンスタープッツァー
4.バンドネオン
5.ヴィクトール
6.炎のマズルカ

だいたいこんな感じかな。