電柱とヴィヴィアン・ウエストウッド

春の雨。
ベランダの向こうには六本もの電柱がひしめき合い、電線をからめ合っているけれど、このいかにも東京的な醜さをじつはあまり醜いと思っていない。
夏のあいだ、ゴーヤの葉越しに見る電柱もいいし、今日みたいな日、電線にしずくがきらめいているのを見るのも好きだ。
そして弛みのそれぞれに違う懸垂線がつくる黒一色の模様の面白さ。
着物の古典柄にこういうラインがあるよな(あれは海の波の意匠?)。
この電線には数年来、雉鳩のカップルが留まりにくる。

思いがけずちょっぴりもらった印税でコンタクトの上からする眼鏡をつくったから、薄暗い日はぼんやりしていた視界がぱあーっと明るくなる。
ヴィヴィアン・ウエストウッドので、横長に四角いフレームは明るいパープル。
レンズの両脇と飴色のつるの先端には、コスモスめいた花模様。
そしてつるの蝶番側には、茄子紺でドクロの連続模様が入っている。
さらにフレームの脇と内側は透明がかったピンク。
一見するとそれほど派手でもないんだけど、よく見るとなんて素敵でお洒落な眼鏡なんだ。
かけるのがうれしいな。

大降りのなか、待ち合わせで近くのトンボロというカフェに行ったら臨時休業だった。
アンティーク風のとても素敵な店なのだが、ご近所の上品な奥様はここのことを間違って「トンポーロー」と呼んでいる。
それでは上海あたりにある西洋風のカフェが「さばのみそ煮」と名づけられているようなものではないか。
ところでトンボロってなんだっけ。

一瞬でする読書に加藤徹の『漢文力』。