物見遊山の暇はないの


鎌倉は崖だらけの土地。
気がつけば、いたるところ削れた岩肌がのぞいて見えるのが面白い。
遊歩道の散歩のつもりで大仏ハイキングコースを歩いて、源氏山が実はけっこう本格的な山だったことを知る。
もはや買い換えられないので大事にしていた旧定番の二足目カンペールがぼろぼろになる。

古くて有名なお寺や神社というのは、いろいろ遊べるところがあっていい。
たとえば葛原岡神社の魔去ル石。
100円で陶器の杯を買い、この石に叩きつけて割ると災難がふりかからないそうだ。
他の人々によって割られた杯の瓦礫の山に、いい音を立て新たな破片が飛び散る。
楽しい。
大仏の胎内めぐり、長谷寺の弁天窟めぐり。
ちょっと空気の違う暗闇のなか身を屈め、どきどきしながら進み歩くのが楽しい。

実は鎌倉の大仏を見るのは生まれて初めて。
小津とか溝口とか、昭和も半ばまでの白黒映画の画面としてしか知らなかった。
出店があって、着物姿の人たちが行き交っている、そういう世界。
これがあの場所なのかあと思い、ノスタルジックにじんとなる。
境内でローズクオーツのお数珠を買ってもらう。
真ん中の丸い玉を覗くと小さい大仏が拝めるという「ご利益もの」。

最近、走れ、走れとばかりいわれて、本当に長距離走ろうかなとも思っているけど、やっぱり歩くのが気持ちいいな。
あなたに物見遊山の暇はないのよ、走って走って走り続けなさいと比喩的にもいわれていて、こちらも心に刻んではいる。
歩くってことは、物見遊山をしてしまうってことなんだな。
そういえばQちゃん、明日は好タイムで優勝してほしい。