日本戦とマンダレイ

奇跡、奇跡っていうけれど、奇跡っていうのは、たとえば現代の小さな村にマリア様が現れたとか、あるはずもないことが起きるミラクルのことをいうのであって、WBCで日本が優勝したのは実力からして奇跡とまでいえない。サッカー日本代表チームがワールドカップで次々連勝して優勝したら奇跡だと思うけど、ブラジルに辛勝していたとしたら、それも奇跡ではなかったと思う。格上のチームだとしても、その前の二戦を見たかぎりそれほど勢いはなかったし、お休みモードだったし、それに反して日本チームは個別の選手レベルでいえば高い実力をもっているのだから集中力を発揮すれば何とかなると思えたからだ。少なくとも、これまで天才バカボンまがいの緩慢さで厳しいピッチ上に違和感を放っていたロナウドに二点も入れさせないことは十分可能だった。前半ロスタイムの一点目は集中力で防げたし、二点目はちゃんとディフェンスしていれば防げた。個別の技能は高くても全体としてうまく行かないのは、その日その日の成り行きではどうにもならない致命的な構造問題で、私には見えていないことなのかもしれないから、やはりほとんど勝ち目はなかったのかもしれないけど。
なんか違和感をもつのは、そういう世界のなかでの実力とかコンディションとか結束度合いとか具体的な因果関係をあえてすっ飛ばして、「神風よ吹け」的な感じで「奇跡」をこそ求めている風潮があることだ。
玉田はいいシュートを決めたが、期待していた巻は何度もオフサイドを取られて見せ場を作れず残念だった。それからエサにつられていく鯉の集団みたいに玉に引きつけられ、ゴール前ががら空きになっているのを見て、今回欠場の宮本ってディフェンスとしてよくないと思っていたけど、もしかして意外によく仕事をしていたのかなと思った。
その前はアメリカ×ガーナ戦を見て、ガーナ人選手たちのパワーとスピード溢れる試合を気持ちよく思い、体格はがっちりしてるし顔立ちもごついし、隣国コートジボワールドログバたちとはずいぶん容姿が違うけど部族的にどうなのかなーと思ったりした後、あまりに疲れていたので二時間仮眠を取り、日本戦に臨む。試合後はもちろんがっくり。
放映時間の都合だろうが、最後にピッチ上に倒れた中田を映したままで終了するのはあんまりだ。人三倍おセンチな私は不完全燃焼だった中田の無念を思って泣きながら寝た。またしても選手たちの夢を見ながらこんこんと眠り、起きたら出かけなければならないはずの正午過ぎ。指導教授の授業に出る予定だったのに。というより、今大会日本戦の私なりの総括を、大学にいる誰かに(無理やり)聞いてもらいたかったのに。初戦の後に中田の夢を見て、クロアチア戦の後にも見て、その翌日は中村俊輔の夢を見て、今朝はたくさんの選手が出てきたなー。