この数日まるでやる気が出ず、寝転んで桐野夏生の『魂萌え!』を読んでいた。「すごくいい」という意見と「つまんなかった」という意見、両方あったが、前者の方が信用度が高かったため。すごくいい、というより、ナイフで胸を抉られた感じ。自分を取り残して進んでいくかに見える世界の中で孤独を受け容れること、そして孤独な者たち同士が築く連帯は切実な問題で、身につまされる。他の人がどうしてこの小説をいいと思うのかはよくわからない。たぶん、それぞれどこかしらに実感があるのだろう。
それにしても、研究に関係ない本をゆっくり読むのなんて久しぶり。去年の今頃、グアドループ山間部に一人籠もって『Out』の文庫本を読んでいたのを思い出す。夜の強風と奴隷たちの亡霊に怯えながら、死体切断の場面を読むのはなおさら恐怖で、すごい変な気分だった。(泊まった辺りは19世紀初頭、ナポレオン軍に追い詰められた黒人奴隷たちが集団自決した場所なのだ。でも信じられないぐらい美しい熱帯の渓谷で、昼間はそんなこと忘れてしまう)