紅葉

解放感は不調とともにやってくる。ま、それでもよしとしよう。前から読みたかった宮地尚子の『トラウマの医療人類学』をやっと読み始められる。感想はいずれまた。
今、横浜方面は紅葉がきれいだ。日吉キャンパスのルビー色の紅葉と公孫樹のコントラスト。都心の空気の葡萄色も捨てがたい。
ところでガブリエル・コレットを講義であつかったら、一部から激烈な反応があった。その1:ここに書かれているのはどうでもいいこと、ここには冒険物語がない。その2:男に対する女の性的なまなざしが生々しく耐え難い。女の側の権力が感じられていやだ。
根深く、典型的なリアクションである。「面白い」ということは、一昨日ヴェンダースの映画について批判したようなこととセットなのだ。どうでもいい、面白くない、という価値判断がどこで誰によって決められているのかがよくわかる。
私はヴェンダースの映画をそれでも面白いと思えたが、そのことと、コレット(やそれに連なる書き手たち)が激しい拒否反応で迎えられることとの差は何だろう。
ハリウッド映画のヒーロー・ヒロインが白人ばかりなのは、有色人を主役にするとマジョリティである白人の観客が自己投影できないからだ、という話を思い出してしまう。有色人はいつだって白人ヒーローに自分を重ねられるよう仕込まれているというのに。