出身地

ずっと前から知り合いの編集者と話していて、お互い同じ都営団地の出身と初めて知る。そしてお互いこんな世界にいるのにあんなところの出の人がいたなんて、と驚き合う。東京の山の手にも下町にも地方にもないあの廃墟のような町に、今ではわたしは魅力を感じている部分もあるのだが、彼はいまだに直視できず踏み入れることもできないといっていた。
場所そのものというより、やはり今いる世界――インテリのなかだけで暮らしてこられたインテリたちの世界――とのこのギャップが大きすぎるのだ。無気力さ、駄目さが再生産されつづけるのを目の当たりにするときの無力感、哀しさなどについても共感し合えた。それでわたしに何かいいことがあるかというと全然ないのではあるが……、ともあれ発見である。
三宅島島民のこと、殺人事件のこと、戦時中の軍の施設のことなど、いろいろ団地についての情報交換もできた。
今夜は、虹色の暈がかかったほぼ満月。