ジャン=ポール・サロメ『ルパン』、ジャック・ドゥミ『ロバと王女』

6月に横浜で行われるフランス映画祭出品作品の試写。翻訳の仕事の待ち時間、気分転換に観る。『ルパン』は秋に公開も決まっているエンターテインメント大作。ルパン役のロマン・デュリスセドリック・クラピッシュの映画ではおなじみで、相変わらずいかがわしいが(だから泥棒役なのだろうが)親しみを感じる。ルパンの時代はまさにプルーストの時代(サラ・ベルナール好きの女の子が出てくる場面や、ルパンの乗り物が十数年で馬車から自動車になり景色のスピードが変わることなど、プルーストの授業で使えるかも)。カルティエがデザインした宝石類が豪華だ。
ロバと王女』は1970年公開作品のリプリント。ペローの童話をもとにしたミュージカルで、『シェルブールの雨傘』ノリの無邪気な作品だが、27歳のカトリーヌ・ドヌーヴが可愛い。
昨夜から今日の夕方までは、数週間ぶりに少し休んだ。昨日は『嵐が丘』を読み進めた。ちゃんと読むのはたぶん中学の時以来。何度か読んだと思うから、もしかしたら高校生以来かもしれない。前に友人が『ジェーン・エア』の方が好きだといっていたけれど、私は断然『嵐が丘』だったので「へえー」という感じだった。ジェーン・エアが文字を獲得し、自分の人生を切り開いていく女性の自己実現の物語だとしたら、嵐が丘の世界は文字以前のクレオール的世界という論考を読んだとき、なるほどなと思った。そういう世界のなかの化け物みたいな狂った恋愛。吉田喜重ブニュエル、マリーズ・コンデ、水村美苗…いろんな人の『嵐が丘』があるけど、私のイメージに近いのはブニュエルの映画。あの陰影の濃い白黒画面と音楽の組み合わせは忘れられない。