阿部和重『グランド・フィナーレ』講談社、2005年

阿部和重がつまらなかったことはないが、これも面白かった。とはいえあの『シンセミア』を書いた後だというのに、ベテランのテダレの作品という感じがしない。「神町」サーガとか、そういう話は置いておくとして、何というか、これまでの作品・作風への批評、課題と奮闘した跡のようなものが生々しく表れていて、生硬で初々しい感じ。作者の葛藤を勝手に想像し共感してしまう。作家というのは活字になればなるほど、(よくも悪くも)上手くなってしまうとも限らないんだな。