フアン・パブロ・レベージャ、パブロ・ストール『ウィスキー』、シルヴァン・ショメ『ベルヴィル・ランデブー』

『ウィスキー』は日本初公開のウルグアイ映画。東京国際映画祭グランプリ、カンヌでもオリジナル視点賞を取ったそうだ。「南米版カウリスマキ」というコピーに惹かれて試写を観に行ったのだが、カウリスマキよりよかった。
現代とは思えない古ぼけた機械に囲まれた工場主と長年仕えてきたらしい中年の女事務員。ブラジルから戻ってくる工場主の弟に会う手前、二人は夫婦のふりをする…。同じく田舎の父を喜ばすため、恋人同士のふりをする韓流のドラマをこの前偶然見たけれど、あんな子ども(おばさん)だましのドラマとは段違いの、魅力的で機微に富む大人の話だ。
いかにもウルグアイ人の工員という感じの地味なマルタだが、妻を演じて兄弟と暮らすうち、実は感受性もユーモアのセンスも豊かなことが明らかになり、どんどん開放的にきれいになっていくのが見ていて気持ちいい。タイトルの意味するところも途中でわかる仕組みだが、「ウイフキー」と発音するのはスペイン語のせいか、それともウルグアイ弁なのか。
続けて観た『ベルヴィル・ランデブー』も面白かった。ベルヴィルって、一昨年ベトナム料理を食べたパリ北東の、あのベルヴィルだと思って途中まで見ていたのだが、そうでもあるけれどそれだけでなく、フランスにあるかと思えばアメリカにまでつながっている、独特の絵のタッチと想像力が創りあげた架空の町ベルヴィルなんだとわかった。そういう場所を創りあげる想像力(たとえば新宿の街を中国とつなげてしまえるような)はすばらしいと思う。
そして音楽、奇形な人物たち、力を増しすぎてダンサーを食べてしまうタップシューズやカエル料理、薄くて背の高ーい船とそれを追って足漕ぎボートでマルセイユからニューヨークまで行くおばあちゃんと犬。三つ子の老婆歌手とおばあちゃんによる痛快で荒唐無稽な場面の数々。アニメーションならではの可能性を感じることができた。