痛み

「動物のいたみ研究会」によれば、犬や猫の手術をするにあたり、26%の獣医師が「動物も痛みを感じる」と認識しつつも、鎮痛薬を使用しないことがわかったそうだ。理由は「必要ない」もしくは「副作用が心配」だからという。以前、可愛がっていた地域猫のノラーに避妊手術をさせ、その経過が悪くて死なせてしまった経験がある者としては、あまりにつらい事実である。ノラ猫相手の医療など所詮医療ではなく、淘汰が目的なのだと知らずにしてしまったことが今でも悔やまれる。
人間でも痛みというのは本当に個人差があり、鈍い人は他人の痛みにも無関心だ。わたしは痛みでも他の感覚でも人一倍過敏なほうなので、損な体質だと思うことはよくある。同じ程度のダメージでも人より痛みが強い気がする。痛みで苦しむことが多い分、自力で生きることに自信がなく、弱気である。だがその分、天気による空気の違いや雨の降る直前の匂いなども察知できるという喜びもある。鈍感で平板な五感でいいのかといわれれば、やっぱり痛くても敏感なほうがいい。痛みをテーマにした小説で賞金10万円をもらったときは、長年の借りを少しだけ返した(貸しを回収した)(?)ような気がして悦に入ったものだ。痛みを逆手に取れるものなら、どんどんそうしたい。