吉田修一

吉田修一『ランドマーク』講談社
大宮駅西口といえば、わたしがもっとも長いあいだ拠点にしてきたエリアだから、試しに読んでみた。驚くべき退屈さ。文章の薄さ・滑らかさにも内容にも、惹きつけられる部分がない。この作家が今の日本を代表する純文学作家だとしたら、流行雑誌のライターとの差は何なのだろう。ほんの少しの心象風景?長いストーリーを考えつけること?日常そのままを写生しているような、ビルや車やファッションや浜崎あゆみの歌やロフトのグッズ、あるいはより「深い人生」を感じさせるような工事現場やパチンコ屋や汚い定食屋の記述に読者は安心感をかんじられるのだろうか。目の前に見えている景色の、それも表面だけを、わざわざより自由な世界に浸れるはずの小説の中にまで求めているのだろうか。二、三行ごとの無意味な改行、「ちょ、ちょっと」「な、なんだよ」とかいう漫画チックな言い回し、ふと、そこに○子がいるような気がしたのだったなどの紋切り型の多様、貞操帯をつける男や4Pセックスなどアイディアの陳腐さ(同じアイディアでも書きようだとは思うが)。わたしだったら、もっとずっと面白い大宮西口小説を書けるのに!でも100人中100人が吉田修一を選ぶのだろう。
悪口ばかりを書いたが、最近の吉田修一は顔がいいとは思っている。人の顔というのは、野心とか出世とか自信とか苦労とかで、よくも悪くも結構変わるものだ。