侯孝賢

BSでやっていた侯孝賢監督の『ナイルの娘』を観る。大胆さと悲しさが入り混じった不良女子高生の日々を描く朱天文らしい脚本。同じ年(87年)に撮られた『恋恋風塵』とはムードが違っていて、むしろ『憂鬱な楽園』の世界を思い出す。ただし女の子の目を通しているだけ『憂鬱な…』のような開放感や動きには欠ける。夢見るのはいつだって青年だからなー。
台湾なのに、80年代の若者風俗が自分の知っている光景と重なって、なんだかとても懐かしい。主人公がバイトするファーストフードの店では、中森明菜のDesireが流れていた。縦長の長方形に切り取られた網戸の向こうの南国の木々を見ていると、泣き出したいような気持ちになる。ごちゃごちゃした家のなかで飼っている兎や仔犬を見ても。