マリーズ・コンデ2

Maryse Condé, Histoire de la femme cannibale, Mercure de France, 2003
タイトル『人喰い女の物語』はグアドループの画家Michel Rovélasの作品からの引用だというが、どんな絵なのだろう。
夫殺しの犯人をめぐる探偵小説仕立ての物語のなかで、最大のテーマのひとつは混交婚(白人男と黒人女)の疎外であり、ファノンが乳白化ということばで貶めたマヨット・カペシアも参照されている。理解者を装ったスティーヴンの欺瞞と二人を取り巻く世界のなかで疎外を感じつづけるロズリーが、切り刻んで夫を殺したフィエラに自己を重ね合わせながら、人喰い女のイメージを増殖させてゆく。
だがいかにも図式的で筋立て中心のこの作品で、唯一小説として魅力的なのはロズリーとディドとの友情と連帯だと思う。そして女たち、子供たちのちょっとしたスキンシップ、親愛の情としてのキス。コミュニケーションだの関係だのと虚しい大事をいうより先に、それをさらりと確実に実行するのは、スティーヴンでも他の恋人たちでもなく、女友達のディドである。悲しいことだが、何かそこには実感できるものがあった。自分の世界の建設が第一の者と交通とはやはり相容れないのかもしれない、とデリダのことを考えたりする。「教育」という言葉をさかんに使うのが気になる西成彦ラフカディオ・ハーン論のことも思い出す。
女の友情は小説にもっともっと書かれるべきかもしれない。どうせボツにされるだろうけど。