トニ・モリスン

トニ・モリスン『青い眼がほしい』(The bluest eye, 1970)大社淑子訳、ハヤカワepi文庫、2001年
冒頭の姉妹が種を蒔いたマリゴールドの芽が出ない逸話、ピコーラの不幸な妊娠とつながる、「わたし」(クローディア)の白人人形嫌悪と、ピコーラの大好きなシャーリー・テンプルの絵のカップと白いミルク、裕福なムラートの娘(「わたしはかわいいわ! だけど、あんたたちは醜いのよ!」110)、青い氷のような眼をした黒猫、ぐるぐる振り回されてストーブで焼け死ぬ…134、黒人女のお産と馬のお産…183、ジミー伯母の葬儀、女たちによる死化粧(シュワルツバルトと対比的)…206、毒殺による犬の死と引き換えに、青い眼を得たピコーラの妄想…281

これらは明らかにシンボリックでテーマそのものと結びついた場面だけれど、ほかに官能的でうっとりするような場面もたくさんある。特に鮮やかな色のしたたる果汁。

土地の名、土地(彼女たちが「エイケン」と言うと、裂けた羽をした白い蝶が垣根からちらとこちらをうかがっているのが見えてくる。「ナーガドーチェス」と言うと、相手は「はい、そうします」と言いたくなる…121)、ポーリーンの引きずる脚をくすぐるチョリーの愛撫、コフキコガネが描く緑の筋、レモネードの黄色、こけももで紫に染まる服、ポーリーンの前歯の小さな虫歯が広がって抜けるまで…169−170、ぶち割れた西瓜、みだらなほど甘い、大地の臓物…200、野生のマスカットにまみれたキス、性交のみじめな顛末…214、塩っからい汗にうっすらまみれた、固い苺(少女たち)…263,273

中学生時代や金井美恵子が大好きだった頃の読書を思い出せた。